調査・検討対象

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イレッサ情報公開請求

1 何が問題か

イレッサについては、販売開始直後から、間質性肺炎等の肺障害による多数の死亡例を含む重篤な副作用報告が相次いだ。当会議では、公表されている新薬承認情報集(「イレッサ250申請資料概要」)に記載されているデータを中心にイレッサについて再検討し、その安全性に重大な疑問のあることが明らかとなったが、新薬承認情報集では重要なデータの一部がマスクされ非公表とされていたり、動物実験による毒性試験において肺毒性に関する記載がほとんどないなどの不自然な点があり、これらのデータが公表されればイレッサの危険性がより明確になる可能性があった。
そもそも、新薬承認情報集は、公表要件制度廃止の際に、それまでの重要論文の学術誌等への公表に代わる情報提供制度として導入されたものであるが、論文そのものとは異なり、製薬会社側がその「概要」をまとめたものであるため、重要なデータが省略される危険性があることが導入前から指摘されていた。
公表要件制度の下では毒性試験論文は公表されていたのであり、今回のイレッサのケースで、まさに上記のようなデータ隠匿の危険性が明らかになったといえる。

2 基本的な行動指針

情報公開法に基づく情報公開請求を行い、不当な不開示決定に対しては異議申立や訴訟を提起して、情報公開制度による情報取得の途を確立する。

3 具体的行動と結果

2003.7.5 イレッサ承認
7.16 販売開始
10.15 緊急安全性情報発出
12.24 「イレッサ(ゲフィチニブ)の承認審査内容に関する公開質問書」を国及びアストラゼネカ社に提出。
情報公開法に基づく第1次行政文書開示請求
2003.1.23
2.21
第1次請求分について、一部不開示決定発出。
2.28 TIP/JIPらと連名で「イレッサ(ゲフィチニブ)の販売中止に関する要望書」及び「イレッサ(ゲフィチニブ)に関する公開質間書」をアストラゼネカ社に提出。
3.27 第2次請求分について、厚労大臣に異議申立。
4.4 「イレッサ(ゲフィチニブ)の承認取り消し、販売中止、データの全面公開を求める要望書」を及びアストラゼネカ社に提出。
情報公開法に基づく第2次行政文書開示請求。
5.2
6.4
第2次請求分について、一部不開示決定発出。
8.1 第2次請求分について、一部不開示決定の取消訴訟を東京地裁に提訴。
2005.3.1 アストラゼネカ社 動物実験報告書をウェブサイトで公表。
2007.1.26 東京地裁判決。臨床試験報告書の全部不開示を実質的に認める。
2.8 東京高裁に控訴。
11.16 東京高裁判決。臨床試験報告書につき地裁判決を支持。
  1. (1) 2度にわたり情報公開請求を行い、第1次請求では主として動物実験による毒性試験データを、第2次請求では主として臨床試験における有害事象例の詳細なデータの開示を求めたが、いずれも一部不開示決定がなされた。開示されたデータの大部分はすでに公表されているデータであり、新たに開示された意味あるデータはわずかであった。特に、臨床試験報告書をはじめとする承認申請の添付資料については、全部不開示とされた。承認申請資料をはじめとする主要なデータの不開示の理由は、「当該情報を公にすることにより、これら開発に係る情報が他の競争企業に明らかになり、当該申請企業の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」というものである。 これらの一部不開示決定に対し、第1次請求分については厚生労働大臣に対する異議申立を行い、第2次請求分については訴訟を提起した。
    いずれの手続においてもアストラゼネカ社が手続に訴訟参加(当事者以外の、利害関係のある第三者が、自らの利益を守るために訴訟等の手続に加わる制度)し、主としてアストラゼネカ社が不開示とすべきとする詳細な主張を行い、厚生労働省がこれに追随するという形となった。
  2. (2) アストラゼネカ社は、2005年3月1日、営業秘密であるとして全部不開示となっていた毒性試験報告書をウェブサイト上で公表した(ただし、一部にマスクあり)。そのうちのイヌ6か月毒性試験の報告書には、「申請資料概要」には全く記載のなかった呼吸器系の異常所見が多数記載されていた。アストラゼネカ社は、これらの異常所見はイレッサとの因果関係がないと判断されたため「申請資料概要」に記載しなかったとしているが、これは、企業側の判断で重要なデータが「申請資料概要」から除外されてしまうことを示すものであり、まさに、「申請資料概要」の公表のみでは不十分であるという原告側の主張を裏付けるものといえる。
  3. (3) 毒性試験報告書の公表により、臨床試験報告書を全部不開示とすることの是非が訴訟の主たる争点となったが、2007年1月の東京地裁判決は、承認申請添付資料である臨床試験報告書の開示を認めると、他の製薬企業が報告書を自らの承認申請添付資料として流用し、イレッサと同成分の薬の承認を得てしまうおそれがあるなどとして、全部不開示を実質的に認める判断を下し、同年11月の東京高裁判決もこれを支持した。しかし、添付資料を流用して承認を得ることなど不可能であり、一部開示すら認めなかった下級審判決は到底容認できない。そこで、最高裁に上告受理申立を行い、現在審理中である。

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