調査・検討対象

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医薬部外品制度問題

1 医薬部外品とは

医薬部外品は、①吐き気その他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止、②あせも、ただれ等の防止、③脱毛の防止、育毛又は除毛、④ねずみ、昆虫等の防除を目的とするもの、または、厚生労働大臣が指定するもの(指定医薬部外品)であって、人体に対する作用が緩和なもの、と薬事法上定義されている(薬事法第2条第2項)。
医薬部外品は、もともとは口中清涼剤や、腋臭防止剤、育毛剤等、主に衛生目的での製品がその対象とされていたが、1999年に、それまで医薬品とされていたドリンク剤やトローチ剤などの11製品群が『新指定医薬部外品』として扱われるようになり、2004年には整腸薬、消化薬、瀉下薬、うがい薬、いびき防止薬、鼻づまり改善薬など新たに15製品群が『新範囲医薬部外品』として扱われるようになるなど、規制緩和により従来医薬品として扱われていた製品が多数医薬部外品へと移行されている。

2 取り上げた経緯

2013年7月、大手化粧品会社カネボウ化粧品は、ロドデノールを用いた美白化粧品群が、使用者に深刻な白斑症状を引き起こすことが発覚したとして、大規模自主回収を行った。カネボウの発表によると、カネボウ美白化粧品による白斑様症状の発症者数は、同製品が承認された2008年1月25日以降、2014年5月12日時点で19,016人にのぼる。
2011年、株式会社悠香が製造販売する「茶のしずく石鹸」が不特定多数の消費者に小麦アレルギーをもたらしたという事件が発生し、社会問題にまで発展していたにもかかわらず、再び医薬部外品をめぐる健康被害が発生してしまった。
当会議は、上記2つの医薬部外品による健康被害の背景には、制度上の問題点が存在する可能性があると考え、調査を開始した。

3 何が問題か

  1. (1) 医薬部外品の製造承認手続きが緩いこと
    薬事法は、医薬部外品についても、医薬品と同様、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければならないとしているが、臨床試験等の試験成績に関する資料の提出が求められないなど、承認申請資料が医薬品に比して簡素化されている(薬事法施行規則第40条)。
  2. (2) 医薬部外品の有害事象報告義務が緩いこと
    1. ア 医薬関係者による報告義務
      薬事法は、医薬部外品については、医薬品と異なり、医薬関係者に対して、PMDAへの有害事象報告義務を課していない。厚労省は、通達で、医薬部外品についての有害事象報告を事実上要請しているものの、医薬品と異なり同報告は法的義務ではないため、十分に徹底されていないのが現状である。
    2. イ 製造販売業者による報告義務
      薬事法は、医薬品と同様に、医薬部外品についても、製造販売業者に対して、PMDAへの有害事象報告を義務付けている。しかし、報告義務の具体的内容を定めた薬事法施行規則は、製造販売業者に対し、医薬部外品については、有害事象を示す研究報告があった場合のみ報告義務を課すにとどまり、それ以外の有害事象症例に関する報告義務を課してこなかった。
  3. (3) 国の責任
    上記2つの事件については、専ら製造販売業者の責任のみが問題視されていた。しかし、上記2つの事件の経過を検証してみると、厚労省が、医薬部外品に関する安全性審査や市販後安全対策を適切に講じていれば、その被害の発生や拡大を防止できたと考えられた。
    医薬部外品については、従来医薬品とされた製品を医薬部外品に移行するなどの規制緩和が行われてきた一方で、近年、より高い効能を求める消費者の要求に応じて企業の開発競争も激化しており、医薬部外品とされてきた化粧品等においても、もはや「人体に対する作用が緩和」とは言えないものが製品化され、健康被害を惹起するリスクは高まっており、上記2事件は、そのような現状を象徴するものとも言えた。

4 具体的な行動

  1. (1) 2014年1月27日「医薬部外品及び化粧品についての副作用報告義務に関する薬事法施行規則及びGVP省令の改正に対する意見書」(パブリックコメント)を提出
    厚労省は、カネボウ美白化粧品白斑事件を受けて、医薬部外品及び化粧品に関する副作用報告義務を拡大する薬事法施行規則改正案を公表し、パブリックコメントを募集した。
    しかし、同改正案は、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための外国における措置が行われたとの情報を報告義務の対象に含めておらず、また、医薬関係者のPMDAに対する副作用報告義務を改正内容に入れないなど、再発防止策としては未だ不十分であった。
    そこで、当会議は以下の2点を改正案に追加することを求める上記パブリックコメントを提出した。
    ① 医薬部外品等の外国措置情報に関する製造販売業者の報告義務
    ② 医薬部外品等の副作用情報に関する医薬関係者の報告義務
    しかし、2014年2月26日、薬事法施行規則は原案のとおり改正された。
  2. (2) 2014年5月22日「医薬部外品の審査と安全対策に関する意見書」提出
    前述の問題点と、副作用報告義務の改正が不十分なものにとどまったことをふまえ、当会議は、さらに上記要望書を提出し、厚労省に対し、医薬部外品に関する上記事件に対する責任を深く自覚すると同時に、 ①承認審査の運用の厳格化、②製造販売業者の報告義務の対象拡大、③医薬関係者の有害事象報告の法的義務化等医薬部外品をめぐる健康被害の再発防止に向けた実効性のある施策を早急に講ずることを求めた。