No.46 (2014-07-01)
「あきらめないで」というCMのフレーズで有名になった悠香の「茶のしずく」石鹸を覚えていますか。この石鹸によって、多くの消費者が小麦アレルギーによる呼吸困難などのショック状態に陥りました。また、昨年には、大手化粧品メーカーカネボウが製造販売する「美白化粧品」によって、皮膚の色が白く抜ける症状(白斑)が現れる事件が話題となりました。これらは、いずれも「薬用化粧品」と呼ばれる製品でした。
2つの事件による健康被害は、製品に危険な成分が含まれていたために発生したものであるとして、メーカーの責任が問われています。しかし、本当に製造販売上の問題だけだったのでしょうか。より根本的な問題点はなかったのでしょうか。
「薬用化粧品」は、薬事法上「医薬部外品」として分類されており、それは医薬品と一般化粧品の中間に位置づけられています。薬事法では、医薬部外品について、医薬品同様、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければなりません。しかし、医薬品に比べて「人体に対する作用が緩和」であるとして、臨床試験等の試験成績に関する資料の提出が求められないなど、その手続きは簡素化されています。また、医薬部外品は、医薬品に比べて、市販後の医薬関係者及びメーカーの有害事象報告義務が緩和されています。
上記2つの事件では、国が医薬部外品に関する安全性審査をより慎重に行い、市販後の副作用報告義務を強化していれば、その被害の発生や拡大を防止できたのではないかと考えざるを得ません。その意味で、医薬部外品をめぐる上記2つの事件について、メーカーだけでなく、国も大いにその責任を自覚し、再発防止を図るべきです。
医薬部外品は、医薬品とされていた製品が移行されるなどたびたび規制緩和が行われてきました。しかし近年、より高い効能を求める消費者の要求に応じて企業の開発競争も激化しており、もはや「人体に対する作用が緩和」とは言えないものが医薬部外品として製品化されてきており、むしろ健康被害の危険性は増しています。
そこで当会議は、2014年5月22日、厚生労働大臣に対し、「医薬部外品の審査と安全対策に関する意見書」を提出し、①承認審査の運用の厳格化、②製造販売業者の報告義務の対象拡大、③医薬関係者の有害事象報告の法的義務化など、医薬部外品をめぐる健康被害の再発防止に向けた実効性のある施策を早急に講ずることを要望しました。