疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直し
1 「疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する中間取りまとめ」とは
これまで日本では、「疫学研究に関する倫理指針」(平成14年6月制定、平成19年8月全部改正、平成19年11月施行)と「臨床研究に関する倫理指針」(平成15年7月制定、平成20年7月全部改正、平成21年4月施行)の両指針が医学系研究に関連する倫理指針として定められていた。両指針ともに、科学技術の進展や社会経済情勢の変化等に応じた見直しが必要になったとして、平成24年10月の厚生科学審議会科学技術部会において、両指針の見直しを合同で進めることが指摘された。その後、文部科学省・厚生労働省それぞれの委員会で両指針の見直しに関する検討が行われた後、平成25年2月からは、両省の委員会による「疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議」が開催されるに至り、その結果として両指針の統合を前提とした中間取りまとめが提示されたものである。
2 取り上げた経緯
当会議はこれまでに、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会に対する意見書(2009年2月25日)、「ディオバン事件に関する意見書」(2013年9月11日)などで、臨床研究の制度に関する問題提起を行ってきた。また、臨床研究を法律のもとで規制することの重要性と必要性についても提起し続けてきた。今般、合同会議の「疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する中間取りまとめ」に関するパブリックコメント募集が行われたため、意見書を提出することとした。
3 何が問題か
パブリックコメントとして提出した意見書に取り上げた内容は、以下の4点である。
- (1) 臨床研究は、倫理指針ではなく、被験者の権利を保護し研究を管理するための基本法を制定し、法律によって規制すべきである。
- (2) 前記法律では、臨床試験登録の義務を明記すべきであり、また登録・公開内容には研究計画書およびその変更に関する内容や変更時期も含め、さらに研究結果の登録・公開も義務付けるべきである。
- (3) 研究倫理指針には、臨床研究の妥当性を担保するという観点から、臨床研究の実施が正当化されるのはどのような場合なのかに関する基本的考え方を明記すべきである。
- (4) 研究倫理指針には、こどもを被験者とする臨床試験の実施が正当化されるのはどのような場合なのか、基本的な考え方を明記すべきである。
4 基本的な行動方針
前項の(1)でも指摘したように、当会議としては、臨床研究は倫理指針ではなく法規制のもとに管理するべきであるという考えを前提としたうえで、今後も臨床研究規制に関する法の整備を求めていくとともに、研究に関する倫理指針において示されるべき考え方を提起していく。
5 具体的行動
2013(平成25)年10月23日、「『疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する中間とりまとめ』に関する意見書」をパブリックコメントとして提出した。
6 今後の課題
今回とりあげた「疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する中間取りまとめ」の後、統合指針「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(案)」が作成され、この統合指針案に対するパブリックコメント募集も実施された。平成26年10月7日にはパブリックコメント結果を受けての検討会(第12回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議)が開催され、統合指針が確定されるに至っている。今後は、この「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の内容を検討しつつ、臨床研究の法規制実現に向けて必要な活動を行っていくことが求められている。
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- 2014-03-01
- 「疫学/臨床研究倫理指針見直しに関する中間とりまとめ」に関する意見書