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 2013年10月23日、薬害オンブズパースン会議は「『疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに関する中間取りまとめ』に関する意見書」(パブリックコメント)を提出しました。

 当会議はこれまで、臨床研究に関する基本法を制定し臨床研究を法のもとで規制すること、すなわち臨床研究の適切な実施と被験者の権利保護のためには、倫理指針のみならず、法による規制が必要ということを提唱してきました。したがって〝倫理指針の見直し〟だけでは対策として不十分ということになりますが、臨床研究を規制する法律がない現状においては当面、〝倫理指針〟が臨床研究の規制と被験者保護の役割を担う必要があります。

 以上の観点から、当会議としてはまず、臨床研究に関する基本法制定の必要性を指摘したうえで、以下の点を倫理指針に盛り込むことを意見として述べました。①臨床研究等の登録と研究計画書及び結果の公表の義務付け、②実施が正当化される臨床研究は、医療上の必要性及び科学的妥当性の高い研究でなければならないこと、またそれらが満たすべき要件、③未成年者を対象とした臨床研究の実施が正当化されるための要件、以上の3点です。

 臨床研究の法規制に関しては、「中間取りまとめ」の論点9でも「米国では未承認の医薬品等を用いた臨床研究を実施する場合に事前に食品医薬品局(FDA)に申請することが義務付けられており、FDAにより研究計画の科学的妥当性が審査されているが、日本では、治験以外の臨床研究において、法律に基づき事前の届出や審査等を行う制度はない」ということが現状の課題として指摘されました。しかし見直しの方向性では「当面、現行の臨床研究倫理指針にあるとおり、研究計画は倫理審査委員会で審査することとする」とし、これまでどおり治験は法律で規制するが、治験以外の臨床研究は倫理指針のみで規律することとしています。

 被験者の立場からすれば、治験とそれ以外の臨床研究に違いはありません。倫理性・科学性及び参加者の安全は、どのような研究であっても最大限担保される必要があり、そのための制度設計が求められています。近年、米国や欧州では、リスクの低い臨床研究については法規制緩和の方向性が検討されていますが、これはあくまでも基本的に法規制を前提としたうえでの対応です。ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)3極の中で日本だけが、治験以外の臨床研究について法規制を不要としていることが問題です。

 日本では2013年に再生医療推進に向けた関連2法が成立し、薬事法改正も行われました。医療における技術革新や治療法開発のための研究を否定するものではありません。しかし成長戦略の名のもとに先進医療が加速度的に推進されようとしている今こそ、患者の権利と安全確保が最優先であることを再認識すべきときなのではないでしょうか。

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