調査・検討対象

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ベンゾジアゼピン系薬物

1 ベンゾジアゼピン系薬物とは

ベンゾジアゼピン系薬物とは、抗不安作用、催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用をもつ薬剤であり、日本国内で販売されている抗不安薬と睡眠薬のほとんどがそれにあたるが、抗うつ作用そのものは存在しないため、いわゆる抗うつ剤には分類されない。
ベンゾジアゼピンの作用は短期間で消失し、数週間あるいは数か月間の使用により耐性が生ずる。耐性の発現によって、患者は効果の持続を求めるため服用を中止することができず、時に増量が必要になり、身体的・精神的依存につながる。そして、身体的・精神的依存が形成されると、記憶障害、見当識障害、錯乱、幻覚、妄想、けいれん発作、離人感、運動知覚の異常など重篤な離脱症状を生じる場合もある。

2 取り上げた経緯

ベンゾジアゼピン系薬物の依存や離脱症状に苦しむ多くの患者から多数の相談や問い合わせがある一方で、依存や離脱方法について適切な周知がされておらず、特にわが国では安易な多剤かつ長期連用処方がなされているとの問題意識が医師や薬剤師メンバーからでたため、当会議が取り上げることによって、患者に必要な情報を提供すると同時に、医療現場に警鐘を鳴らす必要があると考えた。

3 何が問題か?

  1. (1) ベンゾジアゼピン系薬物を安易に処方している実態
    日本のベンゾジアゼピン系薬物の処方件数は、欧米の6〜20倍と報告されている。また、ベンゾジアゼピン系薬物は、覚せい剤に次いで、薬物関連障害の原因薬物第2位の位置にある。
  2. (2) 継続処方制限がないため長期連用されている
    欧米各国においては、長期連用による依存を防止するため何らかの継続処方期間制限を設けているが、日本においてはそれが存在しないため、何年でも繰り返し処方することができてしまう。
  3. (3) ベンゾジアゼピン系薬物同士の多剤併用の問題点
    ベンゾジアゼピン系薬物同士の併用には科学的根拠がなく、副作用の危険が高くなるにもかかわらず、多剤併用が行われている。
  4. (4) 大量消費及び長期連用の背景−医療関係者の認識の低さ
    上記のような各国と比較した場合の日本における突出した消費量、長期連用、多剤併用の背景に、ベンゾジアゼピン系薬物の副作用や常用量依存に対する医療関係者の認識の低さがあると、複数の医学文献において指摘されている。

4 基本的な行動方針

ベンゾジアゼピン系薬物の依存の危険性が医療界に十分認識され、患者に必要な情報が提供されるよう、製薬企業と国に対して、積極的な措置を求めていく。

5 具体的行動とその結果

ベンゾジアゼピン系薬物の依存症や離脱症状に関する医療関係者の認識と日本における同薬物の処方実態を改善するため、2014年秋から精神科医や患者と意見交換をしながら調査と検討を重ね、2015年10月28日以下を趣旨とする要望書を提出するに至った。

<要望事項>

  1. (1) 以下を内容とする添付文書の改訂
    1. ① 常用量依存症と離脱症状、多剤併用の危険性を警告欄に明記すること
    2. ② ジアゼパムの力価との等価換算値を記載すること
    3. ③ 処方期間の継続に制限を設けること
  2. (2) 自己決定権保障に資する患者向け説明文書の作成・配布・ネット上での公開
  3. (3) ベンゾジアゼピン系薬物の依存症が薬剤情報提供文書に必ず記載されるための施策
  4. (4) ベンゾジアゼピン系薬物依存症に特化した専門医療機関の設置拡充
  5. (5) ベンゾジアゼピン系薬物依存症に関する全ての医療関係者を対象とした研修の実施
  6. (6) ベンゾジアゼピン系薬物依存症に関する医学部及び薬学部における教育の強化

6 今後の対応

上記要望書を提出した後、製薬企業、厚労省、文科省、関連学会等において適切な改善策が実施されるよう注視し、要望を続けていく。