企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン
1 「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」とは
産学連携が推進されることに伴って生じる利益相反問題への対策として、日本製薬工業協会が、製薬企業が医師や研究者に支払った金銭についてインターネットで公開することを定めた自主基準である。2013年4月からの実施をめざして2011年に策定された。
2 取り上げた経緯
当会議は、利益相反問題については、注目情報での情報提供や海外ゲストを招いてのシンポジウムの開催(2010年)等、強い関心をもって取り組んできた。
本ガイドラインにも注目していたが、実施目前になって日本医学会の利益相反委員会や日本医師会において、実施に関して反対もしくは消極意見が出され、予定どおりの実施が危ぶまれる展開となったので、意見を述べることとした。
3 何が問題か
産官学連携によって生じる利益相反関係が、医学研究や医薬品の評価等の公正さを歪める可能性があることは、広く認められているところであり、情報公開を徹底し、透明性を高めることは、公正さを担保する最も基本的な方策である。
本来は自ら率先して透明性の確保に取り組むべき立場にある医療界から消極意見が出て、予定どおりの実施が危ぶまれるという展開は許されるものではない。
4 具体的活動
2013年2月19日、日本製薬工業協会、日本医師会、日本医学会、同利益相反委員会に対し、「『企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン』に関する意見書」を提出した。 意見の趣旨は以下のとおり。
- (1) 日本製薬工業協会は、透明性ガイドラインを予定どおり本年4月から実施するべきであり、日本医師会他は、積極的に対応するべきである。
- (2) 透明性ガイドラインは、日本製薬工業協会の会員各社が、これを参考に自社の「透明性に関する指針」を策定し行動基準とすることを求めており、会員に対する拘束がないが、最低限の基準としての拘束力はもたせるべきである。
また、各社は、少なくとも、同ガイドラインより透明性が劣るような指針を策定するべきではない。
5 今後の課題
結局、透明性ガイドラインは2013年4月から開始された。
しかし、医師会の反対に配慮し、医師に支払う講演料や原稿執筆料等については総額のみの公開とし、個々の医師に対する支払い額の公開は見送られた。
また、もともと、透明性ガイドラインは、企業の研究費開発費、企業の医療関係者に対する医学・薬学に関する情報等を提供するための講演会、説明会等の費用、接待費等が年間の総額でしか示されないなど、その公開範囲が限定的であるという問題がある。
さらに、実際にインターネットで公開されたデータは、その量が膨大であるにもかかわらず、ダウンロード、コピー、印刷等が一切できない仕様となっており、『公開』と呼ぶにはふさわしくないと思える運用実態となっている。一層の透明性の確保のため監視を続け、改善を求めていくとともに、公開された結果をタイアップグループとも連携して活用していくことが必要である。
機関紙
- 2013-03-01
- 事務局長レター「透明性ガイドライン」をめぐる理解に苦しむ展開