調査・検討対象

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BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)

1 BSEとは

牛の脳の組織が海綿(スポンジ)状に変化し、行動異常、痙攣、運動失調、起立不能などの症状を呈して死に至る病気で、1986年に英国で初めて報告された。2000年末現在の英国での発生総数(公式確認のみ)は17万7536頭である。この他、アイルランド、ポルトガル、スイス、フランス、ドイツ等EU14か国から発生の報告があり、日本でも2001年9月に発生が確認された。原因は、核酸を含まない蛋白質である「異常プリオン」の感染とされている。

2 取り上げた経緯

当会議では、「人のプリオン病」とされるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の問題に関し、1997年6月に「硬膜使用患者の追跡調査等」を厚生省に要望し、また、1999年2月には「人血清アルブミン製剤を通じてのCJD病原体の伝達の可能性」を厚生省に質問した経緯がある。
その後も引き続きCJDの問題には関心を払い、情報を集めていた。2001年になってから、英国でBSEからの感染と見られる変異型CJDの患者が100人を超えたとの情報に接し、これらは食肉を通じての感染と報じられているが、牛は医薬品・化粧品の原料としても使われており、当会議の課題にもなり得ると考え、取り上げることにした。

3 何が問題か

2001年9月10日以前は、「日本にBSEが発生しないか」が問題の中心であった。9月11日に疑いのある牛の発生が千葉から報告され、9月22日にBSEであったことが確認された以降は、①食肉を通じての感染が起きないか、②食肉以外の牛を原料とした加工食品は安全か、③牛を原料に用いている医薬品・化粧品は安全か、などが次々問題としてあがった。
これらのうち、③はまさに当会議の課題であり、①②も消費者として重大な関心を抱く問題である。

4 基本的な行動指針

感染の危険のある牛から取った原料を食品・医薬品・化粧品に用いるのを禁止するよう働きかける。
医薬品・化粧品については、2001年10月2日、厚生労働省は、「国産牛の全部位の使用を禁止し、代わりに欧州連合(EU)が「低リスク国」と認定した米国や豪州、アルゼンチン等23か国から調達するよう求める方針を決めた。これは、「英国産の牛は一切の部位の使用を禁止」(1996年)、「BSE発生国の牛は一切の部位の使用を禁止」「脳・脊髄など危険性の高い部位は産地を問わず禁止」(2000年)に次ぐ措置である。これらの措置で安全性が確保できるかについては検討が必要である。

5 行動

まず、科学的な情報収集・検討が必要であるため、東大名誉教授の山内一也先生を講師に「『狂牛病』問題の背景と今後の対策」をテーマとして「時事セミナー」を2001年10月24日に東京・弘済会館で開催した。当日は会場一杯の150人が参加し、関心の高さがうかがわれた。山内先生の講演は、「BSEの感染ルートは肉骨粉で、異常プリオンを多く含む肉骨粉を食べた牛が発病する。肉骨粉は1996年まで英国から世界的に輸出されていた。日本では1996年に「行政指導」がされたが、これが守られていなかった。BSE発生確認後、牛への使用が禁止され、また、牛由来物の医薬品・化粧品等への使用も厳しい措置が取られている。」などの内容であった。これに対し、危険部位問題、牛の背割り、豚や鶏が感染しない理由、日本への感染ルート、輸血の危険性、生前診断の方法等について質疑が交わされた。

6 今後の方向性

日本では、2001年10月より、牛の延髄組織を対象に、ELISA法によるスクリーニング検査とWestern Blot法等による確認検査という形で、全頭検査が行なわれるようになった。この方式で、2008年3月までに、35頭のBSE感染牛が見つかり、処分された。この全頭検査では、2005年12月に、月齢20ヶ月以下は「リスクが低い」として除外され、最近では、「30ヶ月以下」に引上げる動きがある。
米国産牛肉の輸入問題は、米国でのBSE発生や特定危険部位の輸入に伴い、輸入停止とその後の再開を繰り返している状態である。
これらの問題や、牛由来物が関わる医薬品・医薬部外品・医療用具・化粧品の安全問題について、厳重に監視を続けることが必要である。

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  • 薬害オンブズパースン会議
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2001-10-24
薬害オンブズパースン会議主催『「狂牛病」問題の背景と今後の対策』