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 当会議は、BSE(狂牛病)についても、国民の生命・健康と生活に関わることとして重大な関心を持って情報収集を行い、6月頃から当局への対策強化申し入れを検討していましたが、昨年9月10日、国内で遂にBSE発生が報告されました。当会議は、それ以前から計画していた時事セミナー「『狂牛病』問題の背景と今後の対策」を、山内一也東大名誉教授を招いて10月24日の夜に麹町の弘済会館で開催しました。9月11日以来連日のように関連報道が続き、市民の関心が高まっている最中での開催となったため、会場一杯の150人が参加し、熱心な聴講と質疑が行われました。
 山内先生は、まず、BSEは通常目で見ても分からないので、「狂牛病」という名は適切でなく、BSEと呼ぶべきと指摘。その上で、スライドを用い概要以下のように述べました。
 プリオン病として、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、クールー、羊のスクレイピー、牛の海綿状脳症(BSE)等がある。BSEの特徴は、確実に死亡すること、抗体産生がないので血液による診断が不可能、従って「生前診断」が不可能なこと等であり、脳の組織検査が必要である。感染危険部位としては、脳・脊髄・眼などがあり、英国では「特定臓器(SBO)」、EUでは「特定危険部位(SRM)」と呼ぶ。
 感染ルートは肉骨粉だが、その感染性レベルは低く、発病率は平均3%で、異常プリオンを多く含む肉骨粉を食べた牛が発病する。肉骨粉は96年まで英国から世界的に輸出されていた。日本では96年に「行政指導」がされたが、これが守られていなかった。BSE発生確認後、牛への使用が禁止され、また、牛由来物の医薬品・化粧品等への使用も厳しい措置が取られている。変異型CJDは現在までに英国で107名、フランスで4名、アイルランドで1名報告されており、英国での発生は、異常プリオンの潜伏期が20年なら1300名、60年なら136,000名と予測されている。
 以上のような報告に対し、危険部位問題(牛肉自身には感染性がない)、牛の背割り、豚や鶏が感染しない理由(不明だが、豚では3つの経路から病原体を接種したら感染した)、日本への感染ルート、輸血の危険性(評価が難しいが、英国等長期滞在者の献血を制限している)、生前診断の方法(尿や血液での診断が出来るとの報告もあるが、研究の段階である)等についての質疑応答がされました。[国内発生報告の前に書かれたものですが、山内一也「プリオン病とはどんな病気か?」科学、2001年9月号や、山内先生の「人獣共通感染症」のホームページhttp://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jsvs/prion/を参照して下さい。]
 当会議では、今後、厚生労働省ホームページ掲載の、医薬品・化粧品等の「狂牛病(BSE)に関するリスク分類表」へのリンクを行うとともに、引き続き、牛由来物が関わる医薬品・医薬部外品・医療用具・化粧品や食肉の安全性問題についての調査研究を進めることにしています。

用語説明
狂牛病:
BSE…牛海綿状脳症:Bovine Spongiform Encephalopathiesの略。いわゆる「狂牛病」。食肉のみならず、医薬品や化粧品などにも牛由来の原料が広く使われている。危険情報の提供と対策のあり方が問われている。

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