新指定医薬部外品
1 新指定医薬部外品とは
これまで、医薬品類は薬事法による規制・指導対象として<①医薬品、②医薬部外品、③化粧品、④医療用具>に分類されていた。
この分類に対して、「医薬品のうち人体に対する作用が緩和で販売業者による情報提供の努力義務を課すまでもない」ものについて、スーパーやコンビニをはじめとする一般販売店での販売を認めるとし、それが新たに分類された「新指定医薬部外品」というカテゴリーである。
実際には消毒剤、ひび・あかぎれ用剤、のど清涼剤、健胃清涼剤、ビタミン剤、カルシウム剤、ビタミン含有保健剤等の15製品群が指定された。
2 取り上げた経緯とその後の経過
医薬品は薬局、薬店でしか販売できないという規制がある。
1994年 | この規制に対して、風邪薬などの自由な販売を求めたチェーンストア業界からの要望に端を発し、第一期規制緩和推進計画で検討が始まった。 |
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1997年3月28日 | 「規制緩和推進計画の再改訂について」が閣議決定され、医薬品のカテゴリーを見直すことが盛り込まれる。 |
1997年9月22日 | 新カテゴリーに移行する検討対象として23薬効群を選定。この中には催眠鎮静剤、総合感冒剤、解熱鎮痛剤等が含まれる。医薬品販売規制緩和特別部会にて23薬効群の移行の可否を審議し、15薬効群を移行可能と決定した。 |
1998年3月12日 | 中央薬事審議会常任部会は、医薬品販売規制緩和特別部会の報告書を受け、「現行の医薬品区分から医薬部外品類似カテゴリー(当初のカテゴリー名)への移行が可能な15製品群」を承認した。 |
経団連はこの中央薬事審議会常任部会の決定を不十分として、医薬品の定義の抜本的見直しに基づく、解熱鎮痛剤や総合感冒剤を含む大幅な規制緩和を求める要求を出した。
規制緩和推進計画は毎年見直すとされており、経団連の要求を踏まえると、今後も消費者の安全性を軽視する規制緩和の一層の進行が予想されることから、規制緩和に対する意見書の提出に至った。
3 何が問題か
- (1) 医薬品の一部について「作用が緩和で販売者による情報提供の義務を課すまでもない」と認めた事は重大な問題。医薬品の規制緩和問題の核心は医薬品における情報提供の必要性を重視するか否かにかかっており、今回の決定は今後の規制緩和拡大に道を開いた。
- (2) この措置により、コンビニでのドリンク販売が急速に浸透、スーパーでの廉売、自販機販売等により、青少年層や女性にドリンク剤の消費が増えている。ドリンク剤の多くがカフェインやアルコールを含んでおり、清涼飲料水と同じ感覚で消費する風潮の拡大は問題。危険性と同時に不必要なドリンク剤の使用を招く事も問題。
- (3) 経団連の要求に基づく今後の解熱鎮痛剤、総合感冒剤等への規制緩和拡大の可能性。
4 基本的な行動方針
- (1) 医薬品に情報提供を要しないものを認めた事に対して重大な疑問として表明し、今後の規制緩和の拡大を防ぐ。
- (2) ドリンク剤にアルコール、カフェイン、熱量等の成分表示を実施すること、そして正しい説明を行う事とドリンク剤の自販機による販売は禁止するよう要請する。
5 具体的行動
1999年8月4日 厚生省に対して「医薬品の販売規制緩和に関する意見書」を提出
6 今後の課題
経団連の要求に基づく解熱鎮痛剤等への規制緩和の拡大に十分注意し、医薬品の規制緩和にたいして機敏に対応する必要がある。
7 その後について
- (1) その後、引き続く規制緩和拡大の要求に対応して、2004年7月、新たに15製品群、371品目が新指定医薬部外品として承認された。この追加承認により胃腸薬、総合ビタミン剤の多くが医薬部外品となり、コンビニやスーパーで取り扱う品目の大きな拡大につながった。
- (2) コンビニ業界の規制緩和要求は、新指定医薬部外品の拡大とともに、医薬品販売制度改正による登録販売者制度となって実を結んだと言える。消費者は、医薬品についていかに正しい情報を獲得して身を守るかという、薬の販売環境の大きな変化を認識する必要がある。今後の販売実態を厳しく監視していかなければならない。
機関紙
- 2004-04-01
- とどまることを知らない薬の販売規制緩和路線 〜コンビニで薬を売りたいってか?