No.19 (2004-04-01)
1997年に処方箋の必要な医療用医薬品の、処方箋のいらない一般医薬品化(スイッチOTC化)が始まった。1999年には薬剤師のいる薬局・薬店でしか買えない一般用医薬品の一般小売店で買える医薬部外品化が大規模に行われた。ところが、1999年の規制緩和策は経済効果を生み出すことはできなかった。
ところで、1998年に経団連からの、一般用医薬品を医薬品のまま薬剤師のいない一般販売業で扱えるようにすべきとの要望を受け、総合規制改革会議の答申に基づき、昨年政府は「安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品すべてについて薬局・薬店に限らず販売できるようにする」と閣議決定した。
ところが、規制緩和に消極的な厚生労働省は、一般用医薬品についての再度の大規模な医薬部外品化を図ってこれに対応した。
財界の思惑は、消費者のニーズに名を借りての経済活性化であり、目指すは米国のような医薬品の自由販売制度なのである。だから、賢明なる日本の消費者の行動が、今回の規制緩和の経済効果を無にすれば、必ずや更なる規制緩和策が登場してくるであろう。
昨日まで薬事法の定める医薬品だったもの(しかも4年前に部外品化は不適切とされたもの)が、明日からは医薬部外品に衣替えする方針は、薬事法規制を脱法するものである。
あるべき規制緩和策は、理不尽な利権・特権を解体して、公共の利益を図る政策と考えているが、医薬品販売拡大路線は国民の健康を犠牲にした新たな利権づくりのにおいすらしている。
近年一般用医薬品の有害作用が改めてクローズアップされてきた。感冒薬によるスティーブンスジョンソン症候群、間質性肺炎、脳出血などがその例だ。
安全対策の強化や被害救済制度の充実を置き去りにしたまま、経済活性化のためだけの販売拡大路線に対し、25年前の福岡地裁薬害キノホルム・スモン判決の一節が頂門の一針となろう。曰く「人のための医薬品であって、医薬品のための人であってはならない」そういえば、キノホルムも一般用医薬品に配合されていた物質であった。