FDAと製薬企業に距離を置かせる新法(FDA改革法2005)が米議会へ
2005-06-28
FDAと製薬企業に距離を置かせる新法(FDA改革法2005)が米議会へ
(キーワード: FDA改革法2005、米下院に提出、FDAと製薬企業に距離、
ユーザー・フィー法の廃止)
米国では、処方せん薬ユーザー・フィー法(新薬の審査費用を製薬企業が負担する法律)によって、製薬企業の資金が直接FDA(食品医薬品局)に入ることになり、FDAと製薬企業との癒着を強めることになったのではないかとの批判がある。このような批判を受けて、米国では最近、ユーザー・フィー法を廃止し、FDAと製薬企業に距離を置かせるための新法(FDA改革法2005)が、下院に提出された。英国医師会の発行するBMJ誌(2005年5月14日号、330,1106)の記事をもとに紹介する。
先週、米国議会(下院)では、FDAと製薬企業との密接すぎる関係を終ら
せるための新法が、ニューヨークのモーリス・ヒンキー(M Hinchey)議
員(民主党)により提出された。教育や権利擁護に関する活動を展開して
いるNPO団体“公益科学センター(CSPI)”の科学プロジェクト統括部長
であるメリル・グーズナー氏は、「このFDA改革法2005(FDA Improvement
Act 2005、※1)こそが、まさにFDAの信頼回復に必要なものだ」と語っ
ている。
この法律には、経済的な利害の衝突を終らせる目的のいくつかの条項が
含まれている。製薬企業は従来どおり新薬の審査に必要な費用を負担す
るが、支払い先はFDAではなく、財務省の一般基金となる。新法によれ
ば、FDAが基金をどのように使うかを製薬企業と協議することは禁じら
れており、これまでFDAと製薬企業の間に結ばれたすべての協定は廃棄
されることになる。
同法はまた、経済的な利害の衝突関係をもつ科学者がFDA諮問委員会の委
員となることを禁じている。さらに、市販後の安全性・有効性について
は、別個の異なるセンターが設立され、問題が起きたときには、当該薬の
承認には関与していない医師や科学者が安全性対策を立案する。
この法律が成立すれば、製薬企業がFDAに直接支払うという手続きを取り
決めた、旧来の処方せん薬ユーザー・フィー法(PDUFA;1992年成立)の規
定は覆されることになる。新法案を提出したヒンキー議員は次のように述
べている。「処方せん薬ユーザー・フィー法(PDUFA)は、最初のブッシュ
政権のもとで、医薬品の承認をスピードアップすることを目的としたとい
われている。しかし、実際に行ったことは---ブッシュ政権はそうなるこ
とを知っていたと私は思うのだが---規制当局とそれが規制する製薬企業
との間に密接な関係を確立することであった。そして今では、FDAの医薬
品予算の約50%を製薬企業が支出している。しかも、非常に馬鹿げたこと
に、旧来のユーザー・フィー法では、FDAは製薬企業が支出した資金をど
のように使うかを、製薬企業と協議しなければならないことになっている。
そのため、FDAは当初のあるべき姿とは逆の関係を製薬企業ともつように
なったのである」と。
新しい法律では、製薬企業の支出金が財務省の一般基金に入るようにし、
FDAを支えるに必要なレベルの基金拠出を義務づける。同時に製薬企業と
の協議を禁じ、FDAと製薬企業の間でこれまで結ばれた協定は破棄させる
ことになっている。新法の他の条項では、FDAの権限を強化し、市販後試
験を命じたり、安全性に関するラベリングの変更を求めるほか、製薬企
業がFDAの医薬品規制に違反したときは、最高5000万ドルの罰金を課する
ことができる。
FDAは目下のところ新法の制定に関してはノーコメントであり、BMJ誌が
送付したインタビュー申し込みに対する製薬協からの回答もない。
(T)
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