カルシウム拮抗剤に心臓病死増加のリスク
2005-01-31
カルシウム拮抗剤に心臓病死増加のリスク
(キーワード: 降圧剤、カルシウム拮抗剤、心臓病死有害副作用、JAMA誌最近
号論文)
降圧剤として広く用いられているカルシウム拮抗剤については、WHO(世界保健機
関)が「必須医薬品リスト」2005年3月の改訂案で、削除を提案していることを、11月
の注目情報で記載しました(※1)。
2004年12月15日付けの 米国「USAツデイ」紙の1面に、カルシウム拮抗剤が心臓病
死のリスクを増加させるとの記事が掲載されました(※2)。以下は要旨です。
[降圧剤が心臓病につながるという研究結果が得られた
ー利尿剤が依然として最善の降圧剤]
今日明らかにされた大規模研究によれば、非常にポピュラーな
一群の降圧剤は、女性の心臓死のリスクを、とりわけ利尿剤と
併用した場合には、2倍にする可能性がある。
この研究結果は、カルシウム拮抗剤とよばれる医薬品の安全性
についての論議を再燃させるだろう。降圧剤の大規模研究
ALLHAT(オールハット)は、高価な降圧剤にとって替わられる傾
向にある利尿剤が、現在でも降圧の最善の治療剤であることを
明らかにしている。
カルシウム拮抗剤は、血管壁を弛緩させることによって血圧を
低下させる支持(backup)治療剤である。よく知られている製剤
には、カルジデム、ノルバスク、プロカルディアがある。
今回の研究は、カルシウム拮抗剤が、とりわけ利尿剤と併用し
たときに、心臓病死のリスクを2倍にする可能性を示した。女
性を研究対象にするものであったが、今回の知見は男性にも当
てはまるだろうと、執筆者たちは考えている。
「この結果は合併症のない高血圧患者にカルシウム拮抗剤を使用
することに、重大な疑問を投げ掛けるものである」と、筆頭執
筆者のシルビア・ワッサーテール・スモーラー(アルバート・
アインシュタイン医科大学)は語った。「私がもしカルシウム
拮抗剤を利尿剤に併用されたら、どうしてカルシウム拮抗剤な
のかを知りたく思うだろう」。
この研究は、JAMA誌2004年12月15日号に掲載されているが、
WHIと呼ばれる閉経後女性での長期試験研究において、高血圧
を治療された50-79歳の女性約2万人が参加している。
この研究で、心臓への負荷を減じるベータブロッカーを利尿剤
と併用した女性と比較して、カルシウム拮抗剤を利尿剤と併用
した女性は、死亡リスクが2倍であった。また、利尿剤を単独
で用いた女性と比較して、カルシウム拮抗剤を単独で用いた女
性は、死亡リスクが55%高かった。
このJAMA誌(米国医師会発行)の論文(「高齢女性での降圧剤治療と心血管アウト
カムの関係」 JAMA 292,2849-2859,2004)は、同誌のウェブサイトに要旨が掲載
されています(※3)。
(T)