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医療における利益相反管理―新たな最前線

2022-01-26

キーワード:利益相反 監視と透明性 企業拠出金 医療エコシステム 
 
 近年、デジタル業界と連携し、健康管理から疾患管理、治療、予防医療を持続的に推進する医療エコシステムの構築が叫ばれているが、製薬、医療機器、バイオテクノロジー業界等の医療関連業界がそれらに積極的に関与している。これら企業が医療活動に影響を及ぼす仕組みはより多様で巧妙になってきている。
 医療関連業界と医療エコシステムにおける利益相反関係を分析した論文(※1)をもとに、現在の利益相反管理の課題について述べたBMJの“Opinion”(※2)を紹介する。

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 医療関連業界と医療提供システムとの利益相反関係を分析するために、500以上の関連する研究報告書を分析した結果、業界の目標と戦略は信じられないほど広範囲で多様であった。

 医療関連業界は、医療エコシステム(研究者を含む医療従事者、医療教育機関、市場関係者、政府、非営利団体等が関係する)の中で、研究、ガイドライン開発、処方集の選択、医療専門家の教育、およびその他の非臨床的活動等を通じ、金銭的、非金銭的に関与し、相互に蜘蛛の巣状の影響を及ぼしている。その影響は拡大しながら循環し、最終的に処方者と患者との関係において最大の力を発揮する。

 これらに対抗して軌道修正するためには、患者支援団体、公務員、財団なども含むシステム全体の完全な透明性と監視が必要である。また、業界からの贈答品、食事、講演者への謝礼、その他のマーケティング上の「特典」を直ちに取り除く必要がある。消費者への直接的広告も有害で不要であり、許可されるべきではない。利益追求を目的とする組織から、新しい検査や治療法の発明を切り離す戦略も必要である。

 しかし、これらのステップを超えて、緊急に必要なのは、業界が製品を開発し、販売するために展開する複雑な蜘蛛の巣状の相互関係を考慮した新しい構造的アプローチである。業界から一定の拠出を求め、その拠出金をこの重要な課題に関する研究にあてるべきである。

 企業はかれらの仕組みがどのように働くかをよく理解しており、実際、その仕組みを作りだすのに十分抜け目がない。患者を守り、医療制度に対する社会の信頼を確保するためには、利益相反に対する私たちのアプローチも同様に洗練されたものでなければならない。

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 わが国においても、医療エコシステムに関する動きが顕著になっている。第5期科学技術基本計画(2016〜2020年度)に「Society 5.0」というキャッチフレーズが登場した。Society 5.0時代における医療分野の課題は、質の高い保健医療システムを維持・強化しつつ、いかに直面する超高齢社会の課題を解決するかであり、産学官民一体となった基盤形成のもと、Society 5.0時代の次世代医療エコシステムを実現するとしている。

 もはや、医療分野における産学官民一体が当然のごとく語られ、代表的大学が率先してプロジェクトを立ち上げている。

 利益相反管理に関する国境を越えた取り組みが求められており、その一環として企業拠出金の実現を望みたい。  (N.M)