欧州の大学の17%しか臨床試験結果を規定の12か月以内に報告していない
2019-08-29
(キーワード:臨床試験結果報告 臨床試験登録 公表バイアス)
これまでも、注目情報では、臨床試験登録制度に基づいて登録された試験に関する終了後の報告が極めて不十分である問題を取り上げてきた(※1)。
欧州の大学について、臨床試験が終了後12か月以上を経過した試験結果の報告に関する実施状況を分析したところ、17%しか報告されていないという結果であった。BMJに掲載された要旨を紹介する(BMJ online 2019年4月30日、※2)。
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欧州では、2014年から、欧州医薬品庁(EMA)の管理下で、大学で行う臨床試験に関して、試験終了後12か月以内に試験結果を報告するという規則が実施されている。
臨床試験の透明性を求める英国、ドイツ、ベルギー、オランダの4か国の各活動グループが提携して、この規則の実施状況を分析した。
欧州医薬品庁(EMA)が管理するEU臨床試験登録レジスター(EudraCT)のもとにある欧州の30の大学(英国を含む)を調査した結果、報告されるべき940試験のうち、162試験(17%)しか報告されていなかった。英国の大学は報告率69%で、最も多く報告されていたが、デンマーク9.9%、オランダ8.7%、オーストリア7.9%、ベルギー3.9%、ドイツは2.5%しか報告していなかった。フランス、イタリア、ノルウェー、スウェ―デンの代表的医科大学は、臨床試験結果の投稿を怠っていた。
EMAは、2018年9月より、試験結果を提出していない大学を追跡し、結果の提出の催促状をすべての後援者に送っている。
しかし、結果の報告はたやすくはない。必須医薬品のための大学連盟キャンペーングループライプチッヒ大学支部のS.セバスチャンは、「結果の抄録をアップデートするプロセスは大変複雑で、プラットホームが不親切だ。製薬企業は報告工程を専門機関に外注している」と語った。
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欧州の臨床試験結果報告の遵守に関する調査では、調査対象の7274試験の報告率は49.5%であり、スポンサーが製薬企業による試験では68.1% であったのに対し非営利の場合の試験は11.0%であったことが報告されている(※3)。S.セバスチャンのコメントはスポンサーが企業であるか否かによる報告率の大きな差を裏付けているか?
当会議は、一貫して臨床試験登録の制度化を要望してきた(※4、※5)。医薬品の有効性・安全性に関する特定臨床研究に関しては、2018年4月「臨床研究法」が制定されたが、一般臨床試験に関しては倫理指針にとどまり、「臨床研究に関する倫理指針」「疫学研究に関する倫理指針」を統合した「人を対象とする医学系研究に関する 倫理指針」(2014年)にて,試験の登録に加え、結果公表に関する規定が追加されたにとどまる。日本の実態に関する調査結果としては、UMIN-CTRシステムが開始された2005年6月から2010年6月までに日本で実施され、米国の登録システムClinicalTrials.govに登録された試験に関し、試験結果の公表および部分的公表の頻度は10%に過ぎなかった(公表4.9%、部分的公表5.1%)(※6)との報告がある。登録制度開始後10年間の結果であるが、倫理指針に結果公表が規定された現時点ではどのように改善されているであろうか。 (N.M.)
※2 BMJ (Clinical research ed.). 2018 09 12;362;k3218. doi: 10.1136/bmj.k3218.
※3 Goldacre B, et al. BMJ. 2018;362:k3218.
※6 Trials. 2013 Oct 14;14:333. doi: 10.1186/1745-6215-14-333.