注目情報

  1. ホーム
  2. 注目情報

企業が資金提供した臨床試験の半数以上でアカデミックオーサーはデータ解析に関与していない

2019-03-18

(キーワード:データ解析、利益相反、産学連携、臨床試験、ノルディックコクラン)

製薬企業がスポンサーとなった臨床試験は、スポンサーの影響をどのくらい受けているのだろうか。資金提供企業、開発業務受託機関(CRO)、アカデミックオーサー(資金提供企業及び開発業務受託機関の従業員以外の学術著者のこと)の役割はどうなっているのだろうか。デンマーク・ノルディックコクランセンターの Kristine Rasmussen 氏たちはインパクトファクターの高い7つの医学ジャーナル(New England Journal of Medicine, Lancet, JAMA, BMJ, Annals of Internal Medicine, JAMA Internal Medicine, and PLoS Medicine)の最新の200件の出版物についての横断研究と主任アカデミックオーサーの調査を行った(※1)。

以下はその概要である。
-----------------------------
2014年7月から2017年4月の間に出版された1139件の出版物を特定し、企業から資金提供のあった臨床試験の第III相試験と第IV相試験(薬物、ワクチン、および医療機器)の200件の試験を選択した。NEJMが106件(53%)、Lancetが62件(31%)、JAMAが25件(13%)、であった。また、165件(83%)の試験が薬物試験であった。著者の中央値は19人(5〜103人)で、173件(87%)において1人以上の共著者が資金提供企業の従業員であった。192件(96%)はアカデミックオーサーが共著者となっていた。主任アカデミックオーサーが資金提供企業と利害相反関係にあった試験は165件(83%)であった。ほとんどの試験で資金提供企業とアカデミックオーサーの両方がデザイン、実施、報告に関わっていた。183件(92%)でデザインへの資金提供企業の関与が報告され、167件(84%)で学術論文への関与が報告された。データ管理には、資金提供企業が173件(87%)、アカデミックオーサーが197件(99%)関与した。対照的にデータ解析は約半数の試験にアカデミックオーサーが関与しないで、資金提供企業またはCROによって行われた。146件(73%)に資金提供企業が関与し、アカデミックオーサーが関与したのは79件(40%)のみであった。独立した試験(アカデミックオーサーのみでデータ解析した試験)として分類されたのは8件(4%)のみであった。これら8件の試験のうち4件は主任アカデミックオーサーに利益相反があった。

200人の主任アカデミックオーサーのうち、80人(40%)が調査に回答した。 80名の回答者のうちの29名(33%)が、アカデミックオーサーがデザインについて最終的な発言をしたと報告した。 10名の回答者は、論文に著者として名前が出ていない資金提供企業またはCROの従業員がデータ分析および報告に関与していると述べた。 ほとんどのアカデミックオーサーは、業界からの資金提供を受けていたが、3人(4%)は資金提供企業による出版の遅れを経験している。9人(11%)が資金提供企業との意見の不一致(主に試験デザインと報告に関するもの)を報告した。

企業の従業員およびアカデミックオーサーは、影響の大きいジャーナルで、業界での資金調達されたほとんどの試験の設計、実施、報告に関与している。 しかし、データ解析は、多くの場合、学術的関与なしで行われている。アカデミックオーサーたちは、このコラボレーションを有益だと考えているが、学術的な自由が失われているという報告がある。
-----------------------------
ディオバン事件では、製薬企業主導で行われた臨床試験において、データ管理やデータ解析に企業従業員が深く関与していたことが明らかになった。企業従業員がデータの改ざんやねつ造にも関与していたことが強く疑われたため事件となったわけであるが、企業がスポンサーとなった臨床試験のデータ管理やデータ解析が企業やCROに大きく依存しているのは日本の臨床試験だけではない。企業がスポンサーとなった臨床試験の結果の解釈は注意が必要である。(G.M)

関連資料・リンク等