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画期的な判決でタミフルやHPVワクチン等の臨床データ公表を命じられたカナダ政府

2019-01-15

(キーワード:臨床試験データ公表、カナダ、ヴァネッサの法律、ピーター・ドシ、Prepulsid
<シサプリド>、タミフル、リレンザ、HPVワクチン)

 「抗インフルエンザ薬」タミフル・リレンザやHPVワクチンの副作用問題は、訴訟になるなど、医・薬学界のみならず、今や国民的のみならず国際的な関心の的になっている。そうした時期(2018年7月)に、カナダ連邦裁判所は、同国政府に対し、これらの医薬品に関する未公表の臨床試験データを直ちに公表するよう命じる判決(以下「判決」)を下した。

 このことは、英国医師会雑誌BMJ電子版2018年7月13日号でGareth lacobucci氏が記している(※1)ので、その要旨を以下に紹介する。
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 メリーランド大学の助教で英国医師会雑誌の編集者であるピーター・ドシPeterDoshi氏がタミフル等の臨床試験データの開示をカナダ保健省に求めたところ、同省がデータ開示の条件として秘密保持を要求した。ドシ氏は、その要求を拒否した上で、ダルハウジーDalhousie大学の助教授で保健法研究所の所長のマシュー・ハーダーMatthew Herder氏の支援を得て、カナダ保健省を被告に訴訟を提起した。判決では、カナダ保健省がデータ開示の条件として秘密保持の要求を課するのは“不当”であると述べて、保健省当局に対し、それらの情報を無条件に開示するよう命じた。

 このような判決が出された背景には、2014年にカナダで制定されたいわゆる「ヴァネッサVanessa法」が寄与している。この法律は、医薬品に関する機密情報について開示する権限をカナダ政府に与えるものであり、15歳のヴァネッサ・ヤングが2000年に処方薬Prepulsid(注:日本での商品名はシサプリド)を服用した後に心臓発作で死亡した事件を契機として成立した。

 判決は、その総括において、以下のように述べている。「本事例におけるカナダ保健省の決定は不合理であり、ヴァネッサ法の主目的の一つ、すなわち臨床試験の透明性を改善することを軽視している。カナダ保健省は、議会が臨床試験データを公的なものとすることを意図したことを無視することは出来ず、その目的に直接矛盾する方策を採用することは出来ない。」

 また、カナダ政府が2017年12月に新しい規制を提出することによって、より大きな透明性の方向に動いていることを判決は指摘した。その規制というのは、医薬品や医療機器に対する規制審査過程が完了した時点で、それらの医薬品申請や医療機器の適用に関する臨床情報は公的に利用が可能になるというものである。この規制は2018年末までには発効することが期待されているという。

 ドシ氏はこの判決を出した判事を賞賛し、「仮に本件が先例となり、カナダ保健省が臨床試験のデータを他の人々に対しても、迅速に、かつ秘密保持を課すことなく利用可能にするならば、それは真の勝利となろう。」と述べた。また、「意義深い判決」で「透明性に関する真の勝利」であるとハーダー氏が語ったことも報告されている。
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 このカナダの判決は臨床試験データの開示をめぐる画期的な判決として大いに評価されるべきである。欧州では新薬の臨床試験データを公開するシステムの運用が既に開始されている(※2)一方で、日本では、情報公開請求を行っても公表されている申請資料概要以上のものは開示されず、臨床試験データそのものは不開示となってしまうのが現状である。日本でも臨床試験データ開示に関する立法措置が期待される。 (K.K.)