欧州オンブズマンが EMAに承認申請前の製薬企業との協議内容の公開を求める
2017-11-13
(キーワード: 欧州オンブズマン、承認申請前の製薬企業・行政協議内容、バイアス、情報公開)
欧州オンブズマンは欧州連合(EU)条約によって1995年に設置された役職である。オンブズマン(「~マン」が男性を指す言葉なので「オンブズパースン」も使われる)とはもともと、1809年にスウェーデンで誕生した、行政に対する苦情申し立て制度である。欧州議会の付属機関として設置された行政監督官が市民の権利を保護する観点から、政府機関や地方自治体の行政を監視する責務を担っている。欧州議会が任命し、2013年以降アイルランド出身のEmily O'Reillyが職についている。事務所は欧州議会の本会議が開催されるストラスブール(フランス)におかれ、法律家などを含む約80名のスタッフが働いている。
ピンクシート誌2017年7月21日号が、欧州オンブズマンがEMAに対し承認申請前の製薬企業との協議内容の公開を求めたとの記事を掲載しているので要旨を紹介する。
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欧州オンブズマンは、欧州医薬品庁(EMA)が承認申請前に製薬企業と協議した内容を精査する。オンブズマンは、EMAに製薬企業が影響を及ぼしている問題に取り組むには、それらの情報公開が必要であるとしている。情報公開を推進しているヘルスアクション・インターナショナル(HAI)は、それを歓迎し、規制する側と規制される側の区別があいまいになる恐れがあるなかで、商業的利益が公衆衛生に優先されることがないよう常時監視が必要だとしている。
欧州オンブズマンEmily O'Reilly氏は、7月17日EMA長官のGuido Rasi氏への書簡で、EMAと製薬企業の事前協議が医薬品承認の決定にバイアスをもたらすリスクがあり透明性が必要と説明し、9月の会合での協議を呼び掛けている。
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2004年10月、衆議院憲法調査会は、「議会オンブズマンその他の行政に対するチェックの仕組み」をテーマとする委員間の自由討議を行うに当たって、委員の便宜に供するためとして関連する詳しい基礎的資料(※1)を作成しているが、労作である。このなかで、権利侵害のおそれが大きい分野や専門的知識が必要な分野での特殊オンブズマンの必要性の議論にもふれ、医療がその具体的分野にあげられている。
当会議は、薬害に関係する公的オンブズマンがない中で、私的オンブズマン(市民オンブズマン)として活動し20周年を迎えているが、国民の生命と健康に密接に関わる分野だけに、公的オンブズマンの設立が望まれる。厚生労働省の「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」最終提言が、薬害の発生及び拡大を未然に防止するため、医薬品行政に関わる行政機関の監視及び評価を行い、適切な措置を取るよう提言などを行う「第三者組織」の設置が必要としており、その実現が切望される。(T)
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