注目情報

  1. ホーム
  2. 注目情報

メソトレキサートが効かない時の関節リウマチ治療に何を選択するか?

2013-12-03

キーワード:関節リウマチ メソトレキサート(MTX) 抗リウマチ薬(DMARDs) 
生物学的製剤

 関節リウマチにおける生物学的製剤(TNF阻害薬)の使用については、当会議が、2009年7月に、生物学的製剤の一つであるエタネルセプト(商品名エンブレル)について、有効性、安全性に関する問題点を指摘し、要望書を提出した(※1)。しかし、欧米のリウマチ学会が早期使用を推奨する流れの中で、我が国においても、2012年には、生物学的製剤の使用ガイドラインが改定され、既存の抗リウマチ薬(DMARDs)未使用の場合にも一定の基準を満たせばメソトレキサート(MTX)との併用による使用を考慮するとした(※2)。しかし、これら生物学的製剤は極めて高価格であり、医療費増大の一因となっている。現在、日本で認可されている生物学的製剤(TNF阻害薬)は5種類あり、いずれも皮下注射ないしは点滴静注により使用するが、月当たりの薬剤費は10万円を超す。

 ここに紹介する論説(NEJM 2013年7月25日論説(※3))は、MTX治療でコントロール不良な場合の生物学的製剤による治療は根拠に乏しいとして、MTXと従来の抗リウマチ薬2種類併用による3種治療と、MTXに生物学的製剤を加えた治療との無作為化比較試験(※4)に関する研究を紹介している。

 試験の結果は、3種治療を実施したグループが生物学的製剤のグループに比較して有効性、安全性において差がなかったことを認めたことから、極めて高価な生物学的製剤を使用する前に、従来の安価な抗リウマチ薬の3種併用を行うことにより、費用対効果が高まると評価している。
---------------------------------------------
 最近の関節リウマチ治療の進歩は、この疾患の関節破壊性を大きく弱めた。MTXの安全性の解明が早期治療を可能にし、生物学的製剤は寛解をめざす併用療法への道を開いた。しかし、MTX単独治療に反応しない場合の2次治療と位置付ける根拠は乏しい。

 O’Dellらは、活動性関節リウマチ患者353例について、MTXにスルファサラジンとヒドロキシクロロキンを加えた治療(3種治療)と、MTXに生物学的製剤エタネルセプトを加えた治療を無作為に割り付け、24週の時点で、閾値に基づく改善を示さなかった場合に、一方の治療に目隠し下で切り替え、有効性と安全性を比較した。

 主要評価項目である48週後のDAS28(疾患活動性スコア28:28の関節の調査にもとづく全般評価指標、2~10スコアの範囲で、スコアが高いほど活動性が大きい)の変化は3種治療の非劣性を示した。副次的評価項目の一つである48週後のX線上での関節破壊の進行も、両グループ間で有意な差はなかった。

 O’Dellらによるこのような比較研究は過去にも行われており、類似した結果を示している。

 最近の治療では、MTX単独治療が有効でない場合に次のステップとして、生物学的製剤が好まれる。しかし、著者は、3種治療をおこなってなお不十分な場合に生物学的愛に切り替えることにより、より良い費用対効果で治療される患者が多く現れるであろうと考察している。

 論説者は、現在、保険適応上は、MTX単独治療でコントロール不良の場合に高価な生物学的製剤治療を認めているが、その前に安価な非生物学的製剤による併用療法を必要とするように変えるか否かが興味あるところであると述べ、O’Dellらのような効果比較試験がもっと行われることにより、合理的な薬物治療に進むことを期待すると結んでいる。
---------------------------------------------
(N.M.)

※3 Joan M.Bathon,M.D et.al;EDITORIALS “Making Rational Treatment Decisions Rheumatoid Arthritis When Methotrexate Fails”.N Engl J Med ; 369(384-85)July 25.2013

※4 J.R O’Dell et.al;Therapies for Active Rheumatoid Arthritis after Methotrexate Failure.N Engl J Med ; 369(307-18)July 25.2013