疾病の定義を拡張するガイドラインのパネリストの4分の3が製薬企業と経済的関係がある
2013-10-31
(キーワード: ガイドライン、利益相反、疾病定義の拡張)
ガイドラインでの疾患の定義を拡張することは患者数の増加、医薬品処方数の増加につながる。医療費の増加をもたらすとともに、不必要な治療は患者を医薬品の副作用のリスクにさらす。製薬企業にとっては、疾患定義の拡張による医薬品売上高の増加は、画期的な新薬がなかなか出ないなかで、棚からぼた餅になる。このため、ガイドラインの改訂を行うパネリストが関係する医薬品の製薬企業と経済的な関係をもつかどうかは重要である。
PLOS メディスン(2013年8月14日)が、米国での現実について調査したオーストラリア・ボンド大学のレイ・モニハンたちの論文(※1)を掲載している。要旨を紹介する。
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米国で2000年から2010年の間に出版されたガイドラインについて検討した。14のありふれた健康状態の診断に関する16のガイドラインのうち、10のガイドラインが疾病定義の拡張、1つのガイドラインが疾病定義の縮小をしていた。残りの5つのガイドラインにはそうした明瞭な疾病定義の拡張や縮小はなかった。疾患定義の拡張は3つのカテゴリーに分類された。
1) 疾病の予備軍を新たにつくる、
2) 診断基準を低くし病人を増やす、
3) より早期の診断法や異なった診断法を新たに提案する、である。
利益相反について情報開示している14のガイドラインにおいて、企業と経済的関係のあるメンバーの平均的な割合は75%であった。12のガイドラインではパネルの委員長が企業と経済的関係を持っていた。経済的関係のあるメンバーが経済的関係を有する企業の数は中間値で7社であった。過剰診断が行われていると推測される診断領域には、高血圧、喘息、注意欠陥過活動性障害(ADHD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがある。
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「病気づくり」、「医療化」(medicalization)が製薬企業の販促活動の一環となっている由々しい現実がある。このようなガイドラインを作成する医師の利益相反の存在には、厳しい目を向け管理していくことが、現代における最重要課題となるだろう。 (T)
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