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ドイツの保険データが示す高齢者の多剤処方と10代の向精神薬処方の急増

2013-09-19

(キーワード:高齢者 多剤投与 小児 向精神薬処方) 

ドイツの高齢者は過剰な処方薬を受け、10代以下の向精神薬処方が医学的な理由がないのに2005年から急増していることを伝えるBMJ電子版の情報を紹介する。BMJ電子版2013.6.14 (※1)

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ドイツの大きな公的健康保険の一つであるBarmer GEKの2012年度医薬品レポートによれば、65歳以上の高齢者210万人の33%は毎日5種類以上の医薬品を服用しており、11%は8種類以上の医薬品を服用していた。
多剤処方は、医薬品の相互作用や、処方された薬を、患者が正しく服用しなかったり、服用し終わらないリスクを高めると警告している。

また、レポートは、認知症患者に対してベンゾジアゼピンが多用され、多くの高齢者がベンゾジアゼピンの中毒であり、禁断症状を避けるために処方を受け続けると指摘する。
一方、2012年にBarmerが支払った154万人の19歳以下の100人に0.32人は向精神薬を服用しており、2005年の0.23人に比べ、41%増加した。
特に、10歳から14歳で顕著で、80%近く増加した。5歳から9歳ではわずかに低下した。

最近の研究が子供における精神的異常の増加を示しているわけでもなく、推奨治療も変わっていないことから、このような増加を説明する医学的理由は存在しないと述べている。

向精神薬が処方されているトップ7の診断名は、
ADHD(注意欠陥多動障害(処方の48%)、
行為障害(29%)、
うつ病(26%)、
不安情動障害(19%)、
精神発達遅滞(18%)、
自閉症スペクトラム障害(13%)、
チック異常症(11%)であった。

2005年から2012年の間に最も処方された4つの医薬品は、
リスペリドン(リスパダール*)、
ピパンペロン(プロピタン*)、
チアプリド(グラマリール*)、
クエチアピン(セロクエル*)である。
           *:日本での商品名を筆者追記

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高齢者の多剤処方の傾向は日本においても同様であり、2013年3月、日本老年医学会は、厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「高齢者に対する適切な医療提供に関する研究(H22-長寿-指定-009)」研究班らによる、「高齢者に対する適切な医療提供の指針」(※2)を発表した。

その中で、「高齢者に対する薬物療法の基本的な考え方」について、有害事象や服薬管理、優先順位に配慮した薬物療法を実践するとして、4項目を掲げているが、特に以下の内容は、薬物療法の基本として重要である。

「疾患や症状毎に薬物療法を行う考え方は必ずしも適切でない。個々の患者の疾患や重症度、臓器機能、身体機能・認知機能・日常生活機能、家庭環境を総合的に考慮し、患者と家族の目指す治療目標に応じて薬物の適用と優先順位を判断し、必要な薬物を選択し、優先度が低い薬剤は中止を考慮する。」 

日本における高齢者の多剤投与に関する調査結果としては、上記研究事業の一つとして、国立長寿医療センターの古田らが以下の内容を報告している(※3)。

2009年1年間のセンター入院データベースをもとに2001名を分析した結果、6剤以上の多剤投与は全体の37.5%、平均処方薬剤数は4.9剤であった。

Beers Criteria(高齢者に不適切な医薬品リスト)(※4)に関連する薬剤は80%の患者に処方され、薬効別の処方薬剤数の割合は、循環器用剤(30.1%)や消化性潰瘍治療剤(11.2%)で高い割合を示した。
認知症患者では平均薬剤数が5.5剤、うつ病患者では7剤と多剤投与の傾向があった。
最も処方数の多い薬剤は下剤、抗血小板剤、抗Ca剤の順に多かった。
薬剤による線分泌抑制や不安が多剤処方の要因となっている可能性も指摘している。

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高齢者に限らず、症状ごとに薬で治そうとすれば薬の種類が増え、それとともに、相互作用や副作用が現れやすくなる。

患者と家族が、症状の原因をさぐり、必ずしも症状を完全になくすことを目標とせず、多くの薬は自己治癒力を助ける役割であることを意識して自らの意思で治療を選択することも重要と考える。
                                     (N.M)
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(※1)German insurer finds a third of people over 65 take fiver or more drugs a day :BMJ2013;346:f3905(14.June 2013)