米国の医師への支払い情報公開(サンシャイン法)
2013-09-19
(キーワード: 製薬企業、医師への支払い、情報公開、サンシャイン連邦法、データ収集開始)
米国において、製薬企業の医師への支払いを「太陽の光のもとで明らかにしよう」という意味で「サンシャイン法」と名付けられた法案が、2010年3月にヘルスケア改革法のサンシャイン条項として成立した。
2013年8月1日に、医師への支払いに関するデータ収集作業が開始され、2014年9月30日には情報公開される予定である。
ニューイングランド医学雑誌(NEJM)2013年5月30日号が、「サンシャイン法―医師への影響」のタイトルで、情報収集作業を目前にした近況を伝えている。以下はその要旨である。
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新たなサンシャイン法は、製薬企業と医療機器企業から、医師および医師教育病院への支払いを公共のウェブサイトへ公開するよう求めている。
対象は、食事、謝礼、旅行費用、助成金を含み、また医師やその親族が関係する医薬品や医療機器などの共同購入組織における所有権や投資利益などの価値の移転にも及んでいる。
公共のウェブサイトに情報公開がされると、誰でも、製薬企業等から支払を受けたり、所有権を取得した医師を特定することができる。
金額は10ドル以上が対象となるが、暦年内で総計が100ドル以下の場合は対象とならない。
データ収集作業は2013年8月1日に開始され、2014年3月末までに、2013年8〜12月のデータがメデイケア・メディケィドサービスセンター(CMS)に提出される。
データを受領したCMSは、2014年4〜9月に提出されたデータをまとめ、関係者が45日間のレビューで確認できるようにし、誤りがあれば訂正する。
CMSは、2014年9月30日にデータを公共のウェブサイトに公開する。
2007年に行われた調査によると、米国の医師の94%は製薬企業等と金銭関係があり、83%はギフトを受け取り、28%がコンサルティングや研究参加のようなプロフェッショナルサービスに対する支払を受けている。
そして、製薬企業等との金銭関係がある医師の60%が医学継続教育に関与し、40%が臨床診療ガイドラインの作成に関わっていた。
データ収集作業においては、
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という3つが報告の対象となる。
報告義務は、医師や医師教育病院にはなく、企業や共同購入組織に課されている。
医師や医師教育病院は、公表が予定された支払いについて、公表される前に例えばコンサルタント料と研究成果のロイヤルティへの支払いを区別するなどの異議を提出できる。
問題とされるのは、技術革新への支出に関し、承認前の開発費の支払いが4年間またはFDAの承認がされるまで情報公開を免除されるという点である。
情報公開がなされる前段階では、この辺の取り扱いについて、攻防が繰り広げられるであろう。
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日本では、日本製薬工業協会が2011年１月に策定した「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」に基づく情報の公表が2013年４月から予定されていた。
これは、医師や研究者に支払った金銭について各企業がインターネットで公開するというもので、公開の対象は、研究費、寄附金、講演料や原稿執筆料、医学・薬学関連文献等情報提供費、接遇費などに及んでいた。
産官学連携によって生じる利益相反関係が、医学研究や医薬品の評価の公正さを歪める可能性があることは広く認められている。
そして、情報公開を徹底し、透明性を高めることは、公正さを担保する最も基本的な方策である。
ところが、公表を前に、日本医学会利益相反委員会や日本医師会から、実施に対する反対意見や消極意見が出され、公表が延期されるという事態となっている。
透明性の確保のための積極的な取り組みは、金銭を払う側と受領する側の双方に求められている。
その実施を目前にして、本来は自ら率先して透明性の確保に取り組むべき立場にある医療界から消極意見が出て、予定どおりの実施ができないという展開は理解に苦しむもので、社会的な不信を招く。
薬害オンブズパースン会議では、2013年2月19日、日本製薬工業協会、日本医師会、日本医学会、同利益相反委員会に対し、「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」に関する意見書を提出した(※1)。
今回紹介した米国の、サンシャイン法に基づく製薬企業などの医師等に対する支払いの情報公開の義務化に示されるように、製薬企業が医療関係者などへの支払額を具体的に公開して透明性を高めることは、国際的な流れであり、日本医師会ほか医学界は情報公開について積極的に対応すべきである。 (T)
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- 関連資料・リンク等
