慢性骨髄白血病治療剤グリベックなどがん治療剤はあまりに高価過ぎ治療継続を困難にしている
2013-09-19
(キーワード:グリベック、分子標的薬、抗癌剤、高薬価、慢性骨髄白血病治療剤)
分子標的薬と呼ばれる抗癌剤やリウマチ疾患治療の生物学的製剤は、抗体医薬品と呼ばれ、画期的な効果を持つものも少なくない。
しかし、従来の薬剤とくらべ膨大な開発コストがかかるとされ、高額な薬価がつくことが多い。
このため、治療薬により病状がコントロールされているにもかかわらず、経済的にゆとりのない患者は、治療を継続できなくなり、まさに金の切れ目が命の切れ目となっている。
米国は自由市場主義経済のもと薬価が基本的に製薬会社による自由価格となっているため、日本やヨーロッパよりもさらに高価格となっている。
以下は、高価すぎる抗癌剤の問題を白血病の国際的な研究者が共同でBlood誌(国際血液学会誌)に掲載したアピールの一部を要約したものである。
(Blood誌電子版2013年4月26日)
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グリベック(イマチニブ)は、最も成功した分子標的薬のひとつである。
この医薬品で慢性骨髄性白血病の10年生存率が20%以下から80%以上になった。
米国でグリベックは2001年に販売された際は、年単位薬価が3万ドルであったが、2012年には9万2千ドルと3倍以上の価格となっている。
研究開発に投資し、革新的な薬を発見した製薬会社は健全な収益から利益を得るべきである。
しかし、抗癌剤の新薬を市場に出すためのコストは、約10億ドルと言われているが、これには臨床試験実施のためのコスト、人件費、広告等のすべてのコストが含まれる。
従って、会社は10億ドル以上売ったらのこりのほとんどは利益となる。
グリペックの場合、インターフェロンとの比較で価格設定がされ、年間3万ドルの価格設定となったが、米国慢性骨髄性白血病(CML)患者は約3万人で年間約9億ドルの収益となり、2年間で開発コストを十二分に埋め合わせたはずである。
FDAが2012年に承認した抗癌剤12剤のうち11剤の価格は、年間10万ドルを超えている。
この10年間に抗癌剤の月単位価格は、5千ドルから1万ドル以上と2倍以上になっている。
グリベックの開発に貢献した研究者を含む研究者たち100名以上が、がん治療薬の高価格が患者に大きな不利益をもたらしているとし、関係者が一堂に会する対策会議を呼び掛けている。
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日本の薬価制度は基本的に下がるしくみだったが、2010年度から画期的かどうかにかかわらず、新薬を一定の範囲の価格で販売すると薬価がさがらないしくみとなった。
米国のように値上がりはしないが、高薬価の新薬は後発が発売されるまでの約10年間、薬価が維持されることになった。
高価すぎる抗癌剤は、患者の生活を破壊し、国の医療財政を破壊しかねない危険な存在となっている。 (GM)
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