廃液中の医薬品の除去には困難があり、ふだんの過剰消費を避けるとともに残余分は回収する取り組みが重要
2013-04-02
(キーワード: 廃液、医薬品除去、医薬品過剰消費、残余医薬品の回収)
未使用の医薬品が捨てられ、あるいは服用した医薬品が体外に排泄されることが、廃水中における医薬品の存在につながる。これらの医薬品が下水処理過程でなかなか除去されず、飲料水を通じて人の健康に影響を与え、また生物濃縮され魚介類摂取を通じて人の健康に影響を与える可能性がある。さらには、生態系への影響も危惧されている。
フランスで発行されているプレスクリル・インターナショナル誌2013年2月号が、「廃液中の医薬品: 処理プラントでの除去は不完全」のタイトルの記事を掲載している。以下は、その要旨である。
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廃水処理ブラントは、廃水中に存在するさまざまな汚染物質、とりわけ医薬品をどれだけ効果的に除去できるのであろうか。2006-2009年の期間に廃水処理プラントからの排水中のミクロ汚染物質を研究してきたフランスのアンペール研究プログラムが、この問いかけに回答している。ここでは医薬品に関する主な結果をまとめる。
廃水処理プラントは廃水中に存在する医薬品を完全には除去できない。廃水処理プラントの効率は、用いられたプロセスに依存し、またいくらかの医薬品では効率が悪い。
アンペール研究プログラムでは、5つのホルモンと32の医薬品を含む127の物質を研究した。医薬品は、主にベータブロッカー、抗生剤、抗うつ剤、非ステロイド抗炎症剤、脂質低下剤、気管支拡張剤である。これらの医薬品は、フランスでの医薬品の消費データ、起こり得る有害性、地上水で検出される頻度が高いことなどから選択された。
フランスとスペインの21か所の処理プラントから81の処理前と処理後のサンプルを採取した。その結果、それらのサンプルの83%に医薬品が検出された。多くは1マイクログラム/リットル以下の濃度であったものの、イブプロフェン、テオフィリンなどは、10マイクログラム/リットル以上の濃度であったし、存在したイブプロフェン、テオフィリンなどと、アスピリンとアセトアミノフェンは、約100マイクログラム/リットルの濃度であった。存在したアスピリンとアセトアミノフェンを除き、多くは1マイクログラム/リットル以下の濃度であった。処理後のサンプルにおいてもその70%に医薬品が検出された。ジクロフェナクやテオフィリンは、3段階に渡る処理の後でも80%以上のサンプルで検出された。
フランスと他の諸国での多くの研究が、未処理の廃水、処理済みの廃水、そして飲料水においてさえも医薬品を検出している。
アンペールプログラムは、限られた数の廃水処理プラント、水サンプル、医薬品を研究したに過ぎない。これらの医薬品の代謝物は考慮されていない。しかし、代謝物の中には活性の強いものがある。また身体のなかではグルコン酸抱合で不活性化されていたのだが、廃水中で抱合が解除され、再び活性化する例もある。したがって、それにもかかわらずアンペールプログラムの研究結果が、多くの医薬品が廃水処理プラントからの排水中に残存していることを示した価値は大きい。
水中の医薬品を含むミクロ汚染物質の存在にともなう環境リスクや公衆衛生リスクについては、ほとんど知られていない。ミクロ汚染物質による影響はある種の水生動物において雄の魚の雌性化として観察されてきた。2012年の終わりの時点で人に対する影響は知られていない。
それらが明らかになるのを待つ前に、今われわれは、医薬品の廃水への放出を少なくした方がよい。廃水中に医薬品が存在し、廃水を処理した後にも医薬品が除かれずに残ることは、医薬品の過剰使用を避ける行動、使わなかった医薬品は捨てずに組織的な回収プログラムで処理するよう促す行動に足を踏み出す良い理由になる。
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日本では医薬品の過剰使用がとりわけ顕著である。この記事が、医薬品の過剰使用を避ける行動を呼びかけている意義は、とりわけ大きい。
また、この記事は使わなかった医薬品は捨てずに組織的な回収プログラムで処理するよう促す行動をとることも呼びかけている。すでに一部の病院や薬局がこのキャンペーンを行っているが、一層の推進を図っていきたいものである。 (T)
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- 関連資料・リンク等
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