ITT解析(治療意図の原理による解析)とper protocol解析(治験実施計画書に適合した対象集団についての解析): 相補いあう情報
2013-02-14
(キーワード: ランダム化臨床試験の解析、ITT解析、per protocol解析)
ランダム化臨床試験の解析方法としてITT解析(治療意図の原理による解析)とper protocol解析(治験実施計画書に適合した対象集団についての解析)が知られている。そのもつ意味や特徴、両者の関係などについて、プレスクリル・インターナショナル誌2012年12月号が解説記事を掲載しているので紹介する。以下はその要旨である。
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臨床試験報告においてITT解析とper protocol解析の言葉がしばしば用いられる。これらの言葉の意味は何か? なぜITT解析は、ランダム化試験の解析方法として質の高い鍵となる解析方法と考えられているのか? per protocol解析もまた役立つ情報を供給するか? これらの問いに答える。
ランダム化臨床試験では比較される2群は、介入(intervention, 当該の医薬品の投与など)のみが異なるのが目標である。しかし、そのように計画していても、実際の診療の場でもそうであるように、臨床試験でも計画通りにはなかなか行かず、プロトコール(治験実施計画書)からの逸脱(deviation)を生じる。
ITT解析では、それらの逸脱があっても当初割り付けられた2群で介入の効果を比較する。ITT解析は、2つの点でper protocol解析に勝っている。第1には介入以外の患者特性が同じになるようにするという割り付けの目的に合致する。第2には臨床試験での介入が毎日の診療に応用されたときの実際の姿を通常最もよく反映する。
per protocol解析は、プロトコールから逸脱した患者は除外して解析する。一部の患者が逸脱するので2群の患者特性の類似性が失われる(attrition bias, 漸減バイアス)。そのエビデンスレベルは低くなるが、ある場合には有用である。per protocol解析は、治療が最善に行われたときの治療効果をよりよく反映する。またper protocol解析は、とりわけ非劣性試験の解析と害反応の解析に有用である。非劣性試験の解析でのITT解析とper protocol解析の選択は複雑で、主に治療効果と、プロトコール逸脱の数、それと何が逸脱をもたらしたかに依存する。できれば両方の解析を行い総合判断するのがよい。害反応の解析でのITT解析の弱点は、その治療を実際には受けていない患者を含めることにある。
部分修正した(modified)ITT解析は、ランダム割り付けしたすべての症例を解析に含めず、実際には拡大した一種のper protocol解析であることに注意が必要である。
結論として、per protocol解析は有用な情報を提供し、ITT解析とper protocol解析の両者は補完し合う情報と言える。per protocol解析はとりわけ非劣性試験と害反応の解析に有用である。
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