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米国パブリックシティズンがFDA諮問委員会でビスホスホネートに2つの使用制限を求める証言

2012-03-01

(キーワード:ビスホスホネート、顎骨壊死、骨粗鬆症、骨折リスク、FDA諮問委員会、パブリックシチズン)

 ビスホスホネート(※1)は骨吸収抑制作用により、骨量を確実に増加させ一部の骨折(脊椎骨の骨折)を有意に減らすことから国内外のガイドラインで骨粗鬆症治療薬の第一選択となっている薬剤である。ビスホスホネートは破骨細胞の活動を抑制し骨吸収を抑制するが骨形成促進作用はない。従って、骨量が増加し当面の骨折は減少するものの、骨の正常な新陳代謝は阻害される。このため長期間継続すると残った骨は古い骨で占められ、もろくなり骨折しやすくなると考えられる。ビスホスホネートによる疲労骨折(大腿骨の非定型骨折など)と顎骨(あごの骨)壊死は同様の作用機序で説明できる。(※2)

 このようなビスホスホネートの非定型骨折や顎骨壊死のリスクについて、FDAの諮問委員会は使用年数を制限するかどうか、一時的な使用中断を推奨するかどうか検討する会議を2011年9月9日に開催した。以下はその会議で米国パブリックシチズンのメンバーが証言した内容の一部を要約したものである。(パブリックシティズン・ウェブサイト、※3)


<非定型大腿骨骨折と顎骨壊死はビスホスホネートの使用と強い関連性>
 パブリックシチズンは、ビスホスホネートとASBMR( the American Society for Bone and Mineral Research) が定義する非定型大腿骨骨折が強い関連性があるとするFDAの評価に同意する。
これまで、これらのまれな疲労骨折は定義があいまいなまま報告されてきたが、ASBMRによる定義によって、ビスホスホネートの使用期間との一貫した非常に強い関連性を見いだした2つの研究とあわせて、3つの研究が報告された。また、顎骨壊死は、FDAの委員会の横断的な調査でビスホスホネートを経口投与された952人のうち1人の割合で起こる特異で危険な副反応であることが明らかにされている。

<骨粗鬆症の3400万人の女性における、臨床的ベネフィットのない重大なリスク>
 骨粗鬆症は、数百万人の健康な女性にフォサマック(Fosamax)の市場を拡大するために大がかりなプロモーションが行われた疾患である。しかし、骨粗鬆症に対するビスホスホネートについてのすべてのランダム化試験で明らかになったのは、代理マーカーである骨密度(BMD)の改善だけであり、唯一の関連した臨床エンドポイントである骨折リスクの改善ではなかった。それにもかかわらずビスホスホネートは、事実上すべての閉経後の女性ばかりでなく骨折リスクを問わないすべての骨粗鬆症患者の治療に現在承認されている。
他方、NOF(the National Osteoporosis Foundation)は10年間で3%以上の臀部の骨折または20%以上の主要な骨粗鬆症骨折のリスクのある骨粗鬆症患者にだけにビスホスホネート使用を推奨している。

<ビスホスホネートは5年後にやめるべき>
 画期的な長期骨折介入拡張研究によると、骨粗鬆症と脊椎骨折の履歴を持つハイリスクの女性でさえ5年の使用を越えてほとんどすべての患者でフォサマック(Fosamax)の効果を全く示すことができなかった。FDAが集めた分析が明らかにしているように、骨折発生におけるこのような効果の欠如は他のすべての経口のビスホスホネートにもあてはまる。他方、5年以上の継続投与は、非定型的大腿骨骨折と顎骨壊死の割合を3〜4倍増大させるという重大なリスクをもたらす。
 よって、FDAは、直ちにビスホスホネートの不要・危険な使用をさせないよう規制しなければならない。そうしないと、これらの2つの患者群におけるビスホスホネートの使用は不必要に、いかなる効果もないままに患者を重大な危険にさらしてしまう。従って、私達は、委員会に以下をFDAに推薦することを勧める。

1)骨粗鬆症による骨折防止のためのビスホスホネートの長期使用は5年に制限されなければならない。
2)世界保健機関(WHO)が開発した骨折リスク予測ツール(FRAX)で、10年間の骨折リスクが有意な患者以外への使用は行うべきでない。

 FDAの諮問委員会では、骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート製剤について、長期投与の注意喚起を促すラベル変更については賛成17・反対6で支持されたが、投与期間の制限や休薬期間については、臨床データが不十分として判断が見送られた。FDAは顎骨壊死との関係も明確には認めていない。一方、日本ではPMDAがBPの「大腿骨の非定型骨折」を評価中のリスク情報としてHP(※4)に掲載している。また、11月8日には添付文書が改訂されているが、「大腿骨の非定型骨折と頸骨壊死」等の注意喚起の内容であり、FDAとともに中途半端な対応という印象である。ビスホスホネートには明確な使用制限が必要ではないだろうか。(G.M)

※1
ビスホスホネート経口剤の国内での販売名:
フォサマック・ボナロン(アレンドロン酸ナトリム)、ベネット・アクトネル(リセドロン酸ナトリウム)、リカルボン・ボノテオ(ミノドロン酸水和物)、ダイドロネル(エチドロン酸二ナトリウム)

※2
ビスホスホネート:大腿骨幹の非定型骨折、作用機序から必然の害作用;浜 六郎(The Informed Prescriber 第26巻8・9号2011(平成23)年7月28日発行)