米国医科大学ではまだ明白な利益相反ルールの違反が存在―レポートが指摘
2011-06-23
(キーワード: 米国医科大学、利益相反ルール、違反、管理の強化)
米国では薬剤処方、医療費などに影響を及ぼす可能性のある医師と製薬企業との金銭的関係が注目され、医師への支払いの情報公開や医科大学などでの利益相反ルールの確立が進められている。しかし、BMJ誌電子版2010年12月30日号が、医科大学での利益相反ルールは定められているが指導的な立場にある医師がこれに違反している例が存在していることを報道している。以下は同誌記事の要約である。
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独立した非営利公益調査ジャーナリズムである「プロパブリカ」が、医科大学は指導的な医師の製薬企業との関係についてのルールを強化しているが、これに違反する指導的な医師が存在することをレポートしている。
最近出されたこのレポートは、厳しいルールを定めた医科大学が、自分のところの指導的な医師がそれに従っているかチェックしていないと指摘し、スタンフォード大学の例をあげている。スタンフォード大学(カリフォルニア)は、指導的な立場にある医師から製薬企業の影響を除くよう最初に試みた大学の1つである。同大学は製薬企業営業員の出入りを禁じ、製薬企業が医師の昼食を提供するのを禁じ、製薬企業の名前を書いた物品の提供を禁じ、2009年からは医師が製薬企業の資金提供した講演を行うのを禁じた。しかし、2010年12月19日に出された「プロパブリカ」のレポートは、十数人もの医師が利益相反ルールに明白に違反して製薬企業の資金提供した講演を行い高額の講演料を受け取っており、そのうち2人は10万ドルを受け取っていると記している。
「プロパブリカ」は、利益相反ルールが実行されているかの管理に医科大学が力をいれるよう指摘している。
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医師の製薬企業との金銭的関係は、医師の薬剤処方に影響を与え、公共の医療費支出を増大させる可能性がある。米国では法律で2013年から製薬企業の医師への支払いが情報公開される。
日本においては,日本製薬工業協会(製薬協)が2011年3月に「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」(※1)を策定し,会員各社に研究費開発費等、学術研究助成費、原稿執筆料等、情報提供関連費、その他の接遇などの費用を2012年度分から公表するよう求めた。会員会社は製薬協のガイドラインを基に、自社における行動基準となる「透明性に関する指針」を策定する。
その際、医療機関等から情報公開に関する了承を得る手順(情報公開を前提とした委受託契約の締結手順等)の策定を進めるよう求めている。原稿執筆料等(講師謝金、原稿執筆料・監修料、コンサルティング等業務委託費)については、個人名・費用の開示を求めた。学術研究助成費(奨学寄附金、一般寄付金、学会寄付金、学会共催費)についても個別に団体名・費用の特定を求めている。一方その他の費用は、年間の件数、総額などにとどまっており、より一層の情報公開が求められる。
また、医科大学・学会側の規制に関しては、2011年2月、日本医学会傘下の各学会(分科会)が「医学研究のCOI(利益相反)マネージメントに関するガイドライン」(※2)を公表するとともに、利益相反に関するガイドラインを策定した日本医学会の分科会がわずか21%にとどまっていることを明らかにし、各分科会に今回のガイドラインを参考に利益相反マネージメントについてのガイドラインを策定するよう要望している。一層の規制と情報公開が求められるところである。(T)