英国では病院薬剤師によるNHS医薬品情報センターが医薬品情報を提供
2008-12-05
[キーワード:病院薬剤師、NHS医薬品情報センター、全国ネットワーク、UKMI]
日本の医療現場では、医薬品情報の提供を製薬企業に委ねており、商業的なバイアスのない情報を得ることは容易ではない。英国では病院薬剤部が全国ネットワークを構築し薬剤師自身が主体的に医薬品情報を提供している。聖マリアンナ医大薬剤部の水上氏、増山氏たちはNHS医薬品情報センターの全国ネットワーク(UKMI)の情報発信業務を紹介している。(註1)以下はその要旨である。
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英国は日本と同様、国民皆医療制度が存在し、National Health Service(NHS)と呼ばれる国営医療制度の傘下の医療機関は国営であり、患者負担は一部を除き無料である。英国の医薬品情報業務の特徴は、NHS病院薬剤部の医薬品情報(Medicines Information以下MI)センターの全国ネットワーク構築により、薬剤師による情報提供が確立していることである。現在英国では200以上の病院薬剤部MIセンターが存在し、その上に16の地域MIセンターがある。これを連携するバーチャルネットワーク組織がUKMIであり、年間50万件の医薬品情報問い合わせに答え、NHSの医薬品適正使用に貢献している。地域MIセンターは家庭医や地域調剤薬局のなどプライマリーケアの医療従事者からの問い合わせに答える役割とともに、現在8ヶ所は専門MIセンターとして「妊婦への投薬」など専門的な情報提供を行っている。UKMIでは前述した業務内容を搭載したサイト(※1)と臨床情報の発信を目的にしたサイト(※2)を管理している。「本稿で紹介した英国の薬剤師の活動は、公平な商業的バイアスのない情報提供を根底に、患者のケアの向上に積極的に関わっている例であり、本邦の医薬品情報活動に取り入れるべきプリンシプルである」と著者たちは考察している。 (GM)
註1:「イギリスにおける薬剤師による医薬品情報発信〜MedicinesQ&Aよくある質問集〜」(医薬品情報学誌10巻2号、2008年8月、日本医薬品情報学会発行)