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WHOガイドライン作成者の利益相反公開をISDBが要望

2007-12-14

(キーワード: WHOガイドライン、エキスパート・オピニオン、利益相反、情報公開)

 ISDB(医薬品独立情報誌国際協議会)執行委員会(書記クリストフ・コップ氏)は、最近のWHO(世界保健機関)ガイドライン・推奨にはエビデンス(科学的根拠)の批判的吟味によるのでなくエキスパート・オピニオン(一部の専門家の意見)に基づくものが多いとして、WHO事務総長のチャン医師に、WHOガイドライン・推奨作成者の利益相反をWHOのウエブサイトで公表するよう求める書簡を送った(※1)。

 この、WHO(世界保健機関)のガイドライン・推奨の実情については、フランスで発行されている医薬品独立情報誌であるプレスクリール・インターナショナル誌2007年12月号が論説でとりあげているので紹介する。以下は論説の要旨である。
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WHO(世界保健機関)の大きな役割のひとつは、臨床診療ガイドラインと推奨保健施策の作成と普及である。WHOは保健問題では最高権威ともみなされているのだが、不幸なことにその評判を落としている。例えば、高血圧のガイドラインは大きな批判を受けて改訂しなければならなかった。WHO必須薬リストの改訂の仕組みについても同様に批判にさらされ、厳格で情報公開されたものとするよう、全面的に改めなければならなかった。

 WHOは2003年に、「WHOガイドライン作成のためのガイドライン」(※2)を公表して、
ガイドラインはエビデンスのレベルで重み付けをしたデータの系統的レビューによって作成するとした。
しかし、2003年9月から2004年2月に専門家チームがガイドラインを作成する16のWHO部門の責任者(または副責任者)21人にインタビューするとともに、エイズ、結核、マラリア、小児の4つの重要な治療ガイドラインを詳細に吟味した結果は、ショッキングなものであった。
これらの責任者のほぼ全員がWHO自身が定めたルールに従っておらず、従おうという気持さえない実情だったのである。彼らは、EBM(科学的証拠に基づく医療)の概念を無視しているようにみえ、その一方で製薬企業との利益相反が問題となる一部の専門家の意見(エキスパート・オピニオン)に頼っていた。

 何人かの部局の責任者は、ガイドラインの欠点には気づいているが、金と時間がないと語った。しかし、今回の調査では、WHOがふさわしい作業方法を適用すれば現在の財源をより良く活用できるはずと結論づけている。また、調査報告書は、国連の機関であるWHOが加盟国に要請された拠出金以上に、外部資金に大きく依存している現実についても注意を喚起した。この民間からのものを含む外部資金は、近年増え続けており、2006-2007年には全体の72.4%を占めるに至っている。いくつかのWHOの活動は、不幸なことにほとんど全額を外部資金に依存している。さらに悪いことに、WHOはスタッフメンバーが製薬企業などの外部スポンサーから直接金を受け取ることも容認しているのである。

 WHOの部門責任者が約束したように、とりわけ貧しい国々が依存している臨床ガイドラインの分野でWHOの信頼性を回復することが急務となっている。外部の影響から独立したガイドラインを作成するために、加盟国からの拠出金を増やし、企業などへの依存を減らさなければならない。WHOに雇われたすべての外部専門家は、利益相反を開示しなければならない。今回の調査結果が、WHOがその本来の使命を果たすよう努めるすべてのWHOの人々を励ます材料となるよう願っている。
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 なお、ガイドライン作成が利益相反によってゆがむ問題に関しては、当会議は、エビデンスによらずエキスパート・オピニオンによって作成された「ゲフィチニブ(イレッサ)使用に関するガイドライン」(2005年3月)について、その作成者の利益相反を明らかにするよう日本肺癌学会に求めた(※3)。しかし、肺癌学会からは未だに開示がない(※4)。  (T)