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FDAが糖尿病薬アクトスに心不全の黒枠警告を要請、諮問委員会での心毒性検討も表明

2007-07-25

(キーワード: ロシグリタゾン、アバンディア、心毒性、ランセット誌ニッセン論文、ピオグリタゾン、アクトス、FDA諮問委員会で検討、心不全黒枠警告)

 糖尿病治療剤アクトスがその一員であるPPAR作動薬(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体作動薬)は、トログリタゾン(ノスカール、三共)、ロシグリタゾン(日本未販売、アバンディア、GSK=グラクソ・スミスクライン)、ピオグリタゾン(アクトス、武田)のPPAR-γ(ガンマ)作動薬3剤が、2型糖尿病治療剤として、FDA(米国食品医薬品庁)により販売承認されてきた。承認はいずれも血糖値低下の代理エンドポイントでなされた。ノスカールは肝毒性などの重篤な副作用で市場から撤退した。アバンディア、アクトスが1999年にFDAにより承認されて後、多くのPPAR作動薬が開発されているが、次世代薬[PPAR-γ,α(アルファ)二重作動薬]であるBMS(ブリストル・マイヤーズ スクイブ)社のムラグリタザール、武田のシポグリタザールをはじめとして、開発断念が相次いでいる。FDAのエル・ヘイジ氏 は2006年に、「この6年間に50以上の新たなPPAR作動薬のIND申請(治験開始申請)が受理されたが、承認販売に至ったものはひとつもない」と報告している(※1)。
 
 5月21日、アバンディアが心筋梗塞、心血管死のリスクを増大させることを示すニッセン医師(米国クリーブランド・クリニック)たちによる、関係論文を総合して分析した論文とそれに関連した論説が、ニューイングランド医学雑誌のオンライン・ファースト版に掲載された(※2、※3)。
 
 FDAはこれを受け直ちに、アバンディアと類薬アクトスに伴う心血管リスク問題を諮るため、用意が整い次第可能な限り早く諮問委員会をもつと表明した[
引用者注: これら薬剤の心血管虚血性/血栓性リスクについてのFDA諮問委員会は7月30日に開催される]。併せてFDAは最近GSK社からアバンディアについてメタ解析結果の提供を受けたが心血管リスクの増大が示されており、確認されれば、糖尿病患者はすでに心臓病のリスクが増しているので重大な関心を呼ぶとコメントした(※4)。
 
 これに対し、米国の医薬品監視市民団体パブリック・シティズンは、FDAは5年前にすでにこのことを知っていたが、対策がとられず被害が拡大したことを証拠とともに示し、FDAに対しアバンディアとアクトスに対するすみやかな対応を求めた(※5)。CBS放送/AP通信はこのことを「FDAはアバンディアの危険を2002年に知っていたのか?」と大きく報道した(※6)。

論説で、サティ氏とファーバーグ氏 は、COX-2阻害薬バイオックスの場合でも、今回のアバンディアの場合でも、適切な警告がFDAによってなされないことを延べ、現在上院を通過した不十分なFDA改革法案が下院で修正強化される必要があると述べた(※3)。
 下院はこの問題で6月6日に公聴会を開催、ニッセン医師、エッシェンバッハFDA長官、ガーニァーGSK社CEO(最高経営責任者)の3人の証言が行われた。エッシェンバッハFDA長官は証言の中で、FDAはニッセン論文が発表された2日後に、アバンディアとアクトスの両方のメーカーに、心不全に関し最も厳しい黒枠警告を行うよう要請したことを明らかにした(※7)。

 また、ニューヨークタイムス紙6月7日号は、今回のニッセン医師たちの論文の元となったデータがどのようにして得られたかを記事にし、臨床試験成績の情報公開が非常に重要であることを強調した。GSK社が抗うつ剤パキシルについての小児の都合の悪いデータを秘匿していたことが、ニューヨーク州の保険財政に大きな損害を与えたとして、同州のスピッツァー検事総長(現ニューヨーク州知事)がGSK社を提訴し、同社が臨床試験データの情報公開を率先して行うことなどを表明して和解したとき、まず公開されたのがアバンディアのデータであった(※8)。

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糖尿病治療薬(PPAR-γ作動薬)アクトスについて、日本においては2000年4月および10月の早い時期に、アクトスは臨床用量で心毒性(心肥大など)と骨毒性(骨量減少)、発がん性(膀胱がん)が認められているため、使用を中止、製造承認を取り消すべきであると、TIP(正しい治療と薬の情報)誌で指摘されている(※9、※10)。当会議では、アクトスの心毒性などを重大な問題としてとらえ、2000年10月に、薬事法69条の3に基づき販売中止と回収の緊急命令発動を求める要望書を提出している(※11)。 (T)