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米国FDAが諮問委員の利益相反をスクリーニングする際のルールを提案

2007-06-20

(キーワード: FDA諮問委員の適格性、利益相反スクリーニング、提案ルール)

利益相反とは、公正になされなければならない判断が二次的、金銭的な利害関係でゆがむ可能性がある状況をいう。大きな経済的利害が絡む新薬の評価には、利益相反が重大な影響を及ぼし、国民の生命と健康を損なう危険がある。日本でも最近、抗インフルエンザ剤「タミフル」の副作用について検討する厚生労働省研究班の主要なメンバーが「タミフル」の販売企業から多額の寄付金を受け取っており、その寄付金が研究班費用にも流用されていたことが判明し、研究班が公正な検討をできるかが大きな問題となった。
厚生労働省は該当メンバーを研究班から外すとともに、研究班メンバーや医薬品の承認について審議する薬事・食品衛生審議会薬事分科会委員の利益相反に関するルールを策定する方針を明らかにしている。
 日本と比較すれば、欧米先進国ではこのような利益相反が早くから問題となってきた。
米国FDA(食品医薬品局)の諮問委員会は、新薬承認の是非と市販後重篤な副作用が明らかになった医薬品の市場撤退の是非について議決を行う非常に重要な委員会である。諮問委員の利益相反については、FDA Waiver Criteria(免責基準)2000で一応ルールが定められていたが、具体的な金額の記載がない上に複雑なものであった。最近、COX-2阻害タイプの抗炎症剤バイオックスによる大規模な薬害などで、FDAは国民を守れていないとの批判が高まり、諮問委員の利益相反スクリーニングについても国民にわかりやすいルールとすることが求められていた。
 そうした中で、FDAは2007年3月諮問委員の利益相反についての新たなより厳しいルールを提案した(※1)。 以下に要旨を紹介する。

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 このガイダンスは、われわれ(FDA)が諮問委員会の参加者を決定するプロセスを極めて単純かつ簡素にしている。ガイダンスは、諮問委員会の透明性、平明性、一貫性を増すことで、国民の信頼を高めることを意図している。

 決定に至る主な手段はフローチャートに従って進めることである。フローチャートは6段階からなるが、その骨子は、
(1) 12か月以内に総計5万ドル(約600万円)を越える金銭関係をもつ人は、その専門性の上での必要性から特別に免責する場合を除き、通常諮問委員会に参加できない。
(2) 12か月以内に総計5万ドル(約600万円)以下の金銭関係をもつ人は、貢献の必要性が、生じうる利益相反を上回るときのみ諮問委員会に参加できるが、議決には加われない。

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 12か月以内の総計が5万ドル(約600万円)というのは、それほど製薬企業から多額の資金を受けている研究者が多い現実を反映したものであろう。なお、EUではEMEA(欧州医薬品庁)が利益相反の程度により国民の健康や生命にもたらす危険性を「リスクレベル」として分類し行政として対処しているが、EUの場合は1年以内といった期間はなく、金銭関係の総額で5万ユーロ(約750万円)が境界となっている(※2)。
厚生労働省は2007年4月23日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会委員についての利益相反問題についての対処を発表した(※3)。ルールを分科会メンバーを中心に外部関係者も交えたワーキンググループで検討し年内を目途に策定する。正式に決めるまで、個別の医薬品等の承認審査や安全対策に係る審議を行う分科会・部会・調査会に対し暫定ルールで対処するが、その内容としては、審議品目の製造販売企業から寄付金など受領実績があり、過去3年間で年間500万円を超える年がある場合は、審議会場から退室する。500万円以下の場合は、出席でき、意見を述べることもできるが、議決に加わることはできない。ただし、寄付金などが講演や原稿執筆などの報酬で、年間50万円以下の場合は議決にも加わることができるとしている。 (T)