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世界保健機関(WHO)の活動資金は誰(WHO)が出すか?

2007-04-20

(キーワード: 世界保健機関、製薬会社からの資金、利益相反)

製薬企業はその資金力で医学界や厚生行政に大きな影響を及ぼしている。最近、服用後にあらわれる異常行動とインフルエンザ治療薬タミフルの因果関係について研究する厚生労働省研究班の班長やメンバーに、タミフルの販売企業から資金が流れていたという利益相反が、国会においても問題とされた。これについて取材を受けた研究班メンバーのひとりは、「一般論として製薬会社の寄付がなくなると日本の医療研究はストップしてしまう」とも語っている(週刊朝日2007年3月23日号)。この製薬企業が及ぼす影響は世界保健機関(WHO)についても残念ながら例外ではなく、WHOが出した降圧薬ガイドラインへの製薬企業の影響などが問題になってきた。  
英国医師会のBMJ誌2007年2月17日号(334、338-340)が、掲題の大きな活字の表題(“WHO’S FUNDING WHO?”)とWHOの本部と思われる大きな写真で、非常に目立つ記事を掲載している。以下は記事の要旨である。
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WHOが製薬企業から寄付を受け取るのに、直接は受け取れないので患者団体を中継点に利用しているという重大な疑惑が持ち上がっている。BMJ誌が入手したEメールは、2006年6月にWHO精神衛生・薬剤乱用部門長のベネデット・サラシーノ医師が、患者団体がWHOのかわりにグラクソスミスクライン(GSK)社から1万ドルを受け取り、これをWHOに回してくれるよう持ちかけたことを示している。WHOガイドラインは、WHOが製薬企業から金銭を受理するのを明確に禁じており、行政当局、NGO(非政府組織)、社会事業財団、科学研究施設、職能団体からは金銭を受け取ってもよいとしているからである。

2006年6月16日付けのEメールで、WHO精神衛生・薬剤乱用部門長のベネデット・サラシーノ医師は、患者団体である欧州パーキンソン病協会(EPDA)のマリー・ベーカー氏にWHOが要請した1万ドルを集めてくれたことに感謝を表明している。これらの金銭はWHOに渡される予定であったが、GSK社は出所をあいまいにするのが条件であることを知ってストップをかけた。しかし、サラシーノ医師とベーカー氏とのEメールのやりとりは、こうしたことが初めてではなく、すでに複数の製薬企業が出した他の金銭が、患者団体を経由してWHOの手に渡った前例があることを明確に示していた。サラシーノ医師は、パーキンソン病を含む神経学的疾患に関するレポートの出版にこの資金を必要としたものだが、GSK社はこれらの疾患の治療薬を生産しており、明らかな利益相反が存在していた。

 このやり取りについてBMJ誌からコメントを求められたサラシーノ医師は、自分の書いたEメールの表現が誤解を招いたが、患者団体を通じて製薬企業から金銭を引き出そうとしたものでは決してないと語った。しかし、Eメールの内容はサラシーノ医師が患者団体を中継点として、製薬会社から資金を受け取ろうとしたことを明瞭に示しており、BMJ誌からコメントをもとめられた患者団体のベーカー氏、GSK社の副社長ベンボー氏はともに、サラシーノ医師のこの言い逃れは理解できるものではないと語っている。

WHO精神衛生部門と製薬企業との金銭的関係が問題になったのは今回が初めてのことでなく、以前WHOがベンゾジアゼピンの長期使用を擁護したときに、ベンゾジアゼピンを製造販売する多くの製薬企業がこの報告書を買い取ることでWHOを資金的に支え、うち1社は50万ドルの寄付をWHO精神衛生部門にしたことがある。

WHOガイドラインは、WHOが製薬企業から金銭を受理するのを明確に禁じている。しかし、どれだけ厳密に適用されるのか? 資金が不足するWHOに誰が資金を出すのか?

 WHOのウプサラ医薬品監視センターのラルフ・エドワード部門長は、ことは精神衛生部門だけのことでなく、製薬企業との望ましい関係を越えて資金を得たいという財政的状況はいずれの部局にもあり、製薬企業からの供与を背景とした圧力にさらされていると警告している。  (T)

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