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施設内倫理審査委員会(IRB)メンバーと企業との経済的関係

2007-02-13

(キーワード:施設内倫理審査委員会、IRB、IRBメンバー、経済的関係、利益相反)

昨年10月の注目情報では、医学研究者と企業との利益相反関係に関する情報公開の話題(※)をご紹介した。医学研究の必要性、妥当性、安全性などを審査して、その研究を施設で実施するかどうかを審査するのが、施設内倫理審査委員会(IRB)である。この審査組織のメンバーについても、企業との利益相反関係は重要である。企業がスポンサーとなっている医学研究の場合、その企業と経済的関係があるメンバーが審査に関与すれば、その関係性が審査に影響するかもしれないからである。
ニューイングランド医学雑誌2006年11月30日号に、米国の学術機関における施設内倫理審査委員会(IRB)メンバーと、企業との経済的関係に関する調査報告が掲載されている。以下にその要約をご紹介する。なお著者は、マサチューセッツ総合病院健康政策研究所とマサチューセッツ大学調査研究センターの医師らである。

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米国の大学や研究施設、病院などの学術機関100施設に設置されている施設内倫理審査委員会(IRB)からIRBメンバー854人を抽出し、質問紙調査を行ったところ、574人(67.2%)から回答が得られた。このうち、自分が所属する大学や病院での研究に対して、企業から研究費を受け取ったことがある人は22.6%、会議や学会、その他活動への参加費を企業から受け取ったことがある人は17.4%、企業から顧問料を受け取ったことがある人は14.5%であった。
このようなIRBメンバーと企業との経済的関係がIRBの決定に対して何らかの不適切な影響を及ぼしたことがあると考えるか? という質問に対しては、回答者553人のうち、85.5%が「まったくないと思う」と答えているが、「まれにはある」とした人が11.9%、「ときどきはある」が2.4%、「よくある」は0.2%であった。
また、企業と何らかの経済的関係があると回答した78人のうち、自分が関係を持っている企業の研究計画書、または関係を持っている企業の競合企業が提出した研究計画書の審査にあたっては、審査からはずれるか? との質問に対して、「常にはずれる」とした人が31人(39.7%)いたが、「ときどき」が8人(10.3%)、「まれに」は12人(15.4%)であり、「はずれたことはない」とした人も27人(34.6%)いた。
このような結果から、IRBメンバーが企業との経済的関係を保持していることが一般的に認められたこと、また、企業がスポンサーとなった医学研究の研究計画書審査に、その企業と経済的関係を有しているメンバーが参加しているという実体が明らかになった。企業との経済的関係から起こるIRBメンバーの利益相反問題に対処するためには、現在の規制や施策をみなおすべきである。 (Y)

文献
Campbell EG, Weissman JS, Vogeli C, et al. Financial Relationships between institutional review board members and industry. New England Journal of Medicine 2006; 355: 2321-2367.