エダラボン(ラジカット)と同じフリーラジカル除去脳保護剤が開発中止に 「神経保護剤開発の時代は終焉?」とランセット誌
2006-12-13
[エダラボン(ラジカット)、フリーラジカル除去剤、脳保護剤(神経保護剤)、脳梗塞治療、NXY-059開発中止、神経保護剤開発の時代の終焉]
エダラボン(商品名ラジカット)は、2001年4月「脳梗塞急性期に伴う神経症状、日常生活動作障害、機能障害の改善」を適応として、世界で初めて承認された脳保護剤(フリーラジカル除去剤)である。海外では承認も発売もされていない。本剤は同年6月の発売後に急性腎不全の重篤な有害副作用が続出し、緊急安全性情報がだされた。その際の情報開示が不十分であったので、薬害オンブズパースン会議では2003年10月に「ラジカットの安全性情報の全面開示を求める要望書」を厚生労働省と三菱ウェルファーマに提出した(※1)。
本剤の使用を推奨する日本の「脳卒中治療ガイドライン2004」は、「脳保護作用が期待される薬剤について、脳梗塞急性期の治療として用いることを正当化するに足る臨床的根拠は、現在のところエダラボンに関するわが国からの報告のみである」と記載している。しかし、その報告(Cerebrovasc Dis 15,222,2003)を審査報告書、申請資料概要と合わせて検討すると、実際はエダラボンの効果を全般的改善度を指標として評価した臨床試験であるのに、試験が終了した後で、試験では評価項目にもなっていなかった一調査項目(Modified Rankin Scale)を評価指標の中心に仕立て直し論文としたものであり信頼できない。また本剤は発症後24時間以内の症例での効果を根拠として承認されたが、それらの症例では本剤群と比較してプラセボ群(偽薬群)は重症な症例が多く公平な比較試験結果と言えない。
このエダラボンと同じフリーラジカル除去剤であるアストラゼネカの治験薬NXY-059が最近効果がないとして開発中止になった。これについてランセット誌2006年11月4日号が「神経保護剤開発の時代は終焉?」のタイトルで論説を掲載しているので(※1)紹介する。以下はその要旨である。
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アストラゼネカ社が同社の治験薬NXY-059について、基幹第3相試験SAINT2の結果、すべてのエンドポイントで効果が示されなかったため開発を中止すると発表したとき、脳卒中治療剤の開発研究は後退を余儀なくされた。NXY-059はこれで、虚血性脳卒中で臨床的に有効性を示すのに失敗した神経保護剤の長いリストに加わった。最近の総説は、1000を超える化合物が虚血性脳卒中の動物モデルで試験されたが、臨床に進んだ114の化合物はすべて失敗に終わったと記載している。
失敗を重ねた後で、研究者たちはこれ以上脳卒中に対する脳保護剤開発の戦略を続けるのが適当なのかが問われている。(T)
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