米国FDA合同諮問委員会のバイオックス販売再開勧告と諮問委員の「利害の衝突」
2005-03-31
米国FDA合同諮問委員会のバイオックス販売再開勧告と諮問委員の「利害の衝突」
(キーワード: FDA合同諮問委員会、バイオックス販売再開勧告、利害の衝突、米議 会)
2005年2月18日に、米国FDAの関節炎薬・安全性リスク管理合同諮問委員会が、メルク社が有害副作用問題で自主的に市場から回収したCOX-2阻害剤バイオックス(ロフェコキシブ)について、販売再開を勧告したとのニュースは世界を驚かせました。
合同諮問委員会は、バイオックスの他、ベクストラ(バルデコキシブ、ファイザー)、セレブレックス(セレコキシブ、ファイザー)の2つのCOX-2阻害剤についても、販売継続の可否について議決を行いました。結果は次のとおりで、とりわけバイオックス、ベクストラについては、僅差でした。
セレブレックス(セレコキシブ、ファイザー) 市場撤去1 対 市場残存30
ベクストラ(バルデコキシブ、ファイザー) 市場撤去13 対 市場残存17
バイオックス(ロフェコキシブ、メルク) 市場撤去15 対 市場残存17
この結果について、「利害の衝突」の観点から、問題が指摘されています。以下はFDCレポート・ピンクシート誌2005年3月7日号からの概略です。
ニューヨーク・タイムズ紙2005年2月25日付けの記事が、FDAが諮問
委員会委員の該当製薬企業との金銭関係とその関係の諮問委員会へ
の影響について明らかにしていないと批判した。
ニューヨーク・タイムズ紙は、公益科学センター(CSPI)からのデータ
を引用し、諮問委員会委員のうち10人が今回諮問委員会が関係する製
薬3社と金銭関係があり、このうち9人がバイオックスとベクストラの
市場残存にともに賛成し、採決結果に決定的な影響を与えたと曝露し
た。
これに対し、FDAのクローフォード局長代理は、企業から金銭を受託し
ていたのは、10人でなく5人に過ぎないと反論している。
―製薬3社との利害関係の有無による委員の投票行動―
バイオックス
企業と関係あり 残存(再開)9 対 撤去1
企業と関係なし 残存(再開)8 対 撤去14
ベクストラ
企業と関係あり 残存9 対 撤去1
企業と関係なし 残存8 対 撤去12
―委員の専門分野別投票行動―
バイオックス
関節炎 残存(再開)6 対 撤去1
安全性・リスク管理 残存(再開)5 対 撤去5
その他 残存(再開)6 対 撤去9
ベクストラ
関節炎 残存7 対 撤去0
安全性・リスク管理 残存2 対 撤去7
その他 残存8 対 撤去6
この問題に対する米国議会の対応を、スクリップ誌2005年3月4日号が記事にしています。以下は概略です。
上院財務委員会の座長チャールス・グラスリー氏は、次の質問に対し、
3月11日までに回答するよう、FDAに求めた。
・採決に参加したコンサルタントと、採決に参加しなかったコンサルタン
トのリストを含む、諮問委員会で配布された資料の提出。どのような選択
基準でFDAコンサルタントは決められたのか。コンサルタントの役割は何か。
コンサルタントのうち誰が採決権を行使できるのかを、FDAはどのようにし
て決めたのか。
・FDAは、明白で感知しうる利害の衝突を特定し、言及する場合には、どの
ような基準で対処しているのか。これらの基準は先日の諮問委員会に適用
されたのか。
・FDAコンサルタントと先日の諮問委員会のメンバーに、FDAに対し製薬企
業との関係についてすべて開示するように求めたのか。求めなかったとす
るなら、それはいかなる理由か。
グラスリー上院議員は、諮問委員会の勧告がメルク社やファイザー社の財
政的利害に直接影響を与えることが明らかで、利害の衝突問題を棚上げに
する場合は、その決定について当局が説明するよう求めた。
マサチューセッツ州選出の民主党上院議員であるエドワード・ケネディ氏
も、当局に諮問委員会メンバー選出の過程をもっと透明化するよう求めた。
(T)
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