FDAの医薬品承認と規制の変化−1983〜2018年
2020-04-20
キーワード:新薬優先プログラム、審査時間の短縮、ユーザー手数料
ハーバード医科大学のjonathan J Darrow、Jerry Avorn、Aaron S Kesselheim 氏共著による表題の論文がJAMAに掲載された。1983年から2018年の間に、FDAが取り組んできた医薬品承認・規制の変更・新設によって承認薬の傾向がどう変化してきたかを調査したものだ。以下に要約を紹介する。
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1983年から2018年にわたる医薬品に関わる法律と規制の取り組みは、実質的にFDAの医薬品承認を変化させてきた。新薬の年間承認数の平均は、1990年代34、2000年代25、2010年代41だが、ジェネリック医薬品の年間承認数は、1984年のハッチ・ワックスマン法(医薬品価格競争および特許期間回復法)制定、2012年のジェネリック薬品ユーザーフィー法制定を境に大きく増えた。中央値で1970-1983年136、1985-2012年に対し2013-2018年は588である。処方薬ユーザーフィー法は1992年にバイオ製品も対象となり、2012年にはジェネリック薬品とバイオシミラー医薬品にも広げられた。製薬企業からのユーザーフィー総額は年間平均で1993-1997年が6千6百万ドル、2013-2017年は8億2千万ドルと跳ね上がった。2018年のユーザーフィー総額はFDA審査員の給料の80%相当を賄っている。
また、1983年にオーファンドラッグ(希少薬)法が制定され、希少薬の割合は1984-1993年の55薬品18%、1996-2007年が82薬品22%、2008-2018年は154薬品41%と増加した。さらに、迅速承認、ファストトラック指定、優先審査のような新薬のための優先プログラムで承認された新薬が、直近1年の承認薬59品目中の48品で81%を占める。従来承認には2つ以上の重要な臨床試験で有効性が支持される必要があるが、この条件を満たす承認は、1995-1997年が80.6%(124薬品中)に対して2015-2017年は52.8%(106薬品中)と減った。1試験あたりの患者数には差がない。審査期間は1983年には3年以上かかっていたのが2017は1年以下である。試験認可から承認までの期間は約8年と変わりない。
過去40年の間に、医薬品承認と規制のプロセスは、特別なプログラムの追加や代替指標の使用を推奨する形へと変化させ複雑さを増してきた。FDAがこれらのプログラムを実施し管理するのに必要な財政は、企業が支払うユーザーフィーを拡大することで対処されてきた。FDAは、ますます少ないデータと多くの代替指標を用いることを許容し審査期間を短縮させてきた。
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医薬品の承認、規制にかかる費用を企業に依存することで、承認要件の緩和を促進し、規制の役割を弱めることにつながっていることを、承認薬の傾向の変化から指摘したものといえる。そのことの悪影響のいくつかについては、注目情報でも紹介してきた(※2、3)。我が国における医薬品分野における規制緩和はグローバル化と国際競争の中で、承認審査のあり方はさらに深刻な状況といわざるをえない。FDAに倣った条件付き早期承認制度(※4)や先駆け審査指定制度では、承認前相談から通すための支援が始まる。もはや規制ではなく、承認促進である。最近の例で、有効性の面でも安全性の面でも先駆け審査の適用条件を満たさないのに拙速承認され懸念が現実のものになったゾフルーザ(※5)、国際標準を無視した承認が国際的批判を浴びているステミラック(※6)、安全性に重大な懸念がありながら承認し死亡例が報告されているイベニティ(※7)などは、患者安全を軽視し、利益優先、国際競争に勝つための露骨な姿勢の現れではないか。本来の規制の役割を取り戻すべきだろう。(N)
※1 FDA Approval and Regulation of Pharmaceuticals, 1983-2018, JAMA2020;323(2):164-176
※7 Serious Adverse Events with Romosozumab Use in Japanese Patients: Need for Clear Formulation of Contraindications Worldwide,Journal of Bone and Mineral Research 電子版 米国時間 2020年4月1日