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英国で新たな企業から医師への支払いデータ情報開示システムがスタート しかし問題が

2015-08-10

キーワード:利益相反、英国製薬工業協会(ABPI)、医師への支払い情報公開システム

 米国のヘルスケア改革法の中で、医療関連企業から医師への支払いを公開する「サンシャイン条項」が施行され、この条項に基づき2014年9月30日からインターネットでの情報公開が行われている(※1)。
 日本でも日本製薬工業協会が2011年11月策定した「透明性ガイドライン」に基づき2013年度分について2014年から公開がはじまった。
 朝日新聞(2015年4月1日)の集計によると延べ10万人の医師に総額300億円が支払われ、1人の医師に対する支払いの最高額は4700万円と報道されている。欧州でも同様の動きがあり、英国製薬工業協会が新たに開始する医師への支払い情報公開システムについてBMJ online (2015年1月2日号)が伝えているので以下に要約する。
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 2015年1月から、英国の製薬企業は、将来の公衆への開示を前提に医師への支払いデータを記録する。これは米国やオランダと共通する動きである。2015年1月から12月までの12か月間のデータが、2016年7月公開される検索データベースにアップロードされる予定である。

 この新しい公開の動きは、欧州からもたらされ、英国製薬工業協会(ABPI)の規則として採用されている。(ABPIには英国製薬会社の98%、121社が加盟している)。また、欧州33ヶ国でも、新しい公開規則が欧州製薬団体連合会と合意されている。これまで、英国には製薬産業から医師および他の医療専門職への支払いを包括的に管理するシステムがなかったことから、歓迎されているむきもある。しかし、新しいABPIの支払い情報公開システムは斬新的ではあるものの、製薬産業と医師の部分的な関係しか提供しない。

 たとえば、医療機器会社や病院チェーンからの支払いは記録されない。ABPIは利益相反の完全公開や医師を強要する力を持っていないのである。

 1月1日から製薬企業は医師や他の医療専門家との間で、公開するための個別の契約をする。ある企業は、500人の医師に契約を呼びかけ、契約締結を拒否したのは2人だけであったという。

 2016年7月からは誰でも個別の支払いを知ることができ、ダウンロードもできる。研究関連の支払いは企業が支払った総額だけで個別には公開されないが、他はかなり徹底したもので、医師および医療専門職に対する直接、間接を問わない全ての支払いが記録される。オランダの様に500ユーロ以下は公表しないという制限もない。

 全データは、ABPIのウェブサイトから少なくとも2年間は入手可能となる。しかし問題がある。医師たちは、公表に際して個別的に開示を拒否することができる 。このことが、データベースの透明性を高める手段としての価値を弱めている。完全な情報公開の実現に欧州と英国のデータ保護法が主要な障害となっている。

 製薬会社は、支払いデータを医師たちが同意しないと公開できなく、これは米国やオランダでは別個の法律が個人情報に優先するのと違っている。医師達の支払い情報は、ABPIから公開される4週間前に告知書 が個別に送られ、その段階で彼らは開示拒否することもできる。ABPIは、公開に同意しなかった人数と総額を年次報告することになっている。王立医師会のJane Dacreは、支払情報公開の動きが時宜を得たものと歓迎し、将来は公開が強制され全面的にオープンになることを望むとBMJ誌に語った。
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 英国の情報公開システムは医師が情報公開を拒否できるという点で不完全なものではあるが、米国と同様に一つのウェブサイトから誰でも自由に全データをダウンロードし検索できる点では評価できる。
 日本の場合は各製薬会社のウェブサイトから個別に情報を入手しなければならず、データのダウンロードも印刷もできないため、個人では容易にデータを入手し比較分析することができないようになっている。
 日本は法律に基づいている米国とは異なり、あくまでも製薬業界の自主ルールに基づく情報公開であり、医学会からの反対の声が大きかったため、このような中途半端な情報公開となっている。
 欧州と日本は早期に米国のレベルに追いつく必要がある。(G.M.)