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75歳以上の米国人の2人に1人がコレステロール低下剤を服用している

2015-08-10

キーワード:コレステロール低下剤,スタチン剤,高脂血症,

 BMJ online NEWS 2014年12月号は、CDC(米国疾病予防対策センター)レポートがコレステロール低下剤の使用を推奨していることに対し、米国内科専門医認定機構財団が提唱する「賢く選ぼう」キャンペーンでの呼びかけや専門家の批判的意見を紹介している。
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 CDCのレポートによれば、2003年から2012年の調査で、40歳以上の成人でコレステロール低下剤を服用している割合は20%から28%に、スタチン剤の使用者は18%から26%に上昇した。
 75歳以上の高齢者では、ほぼ半数(48%)がコレステロール低下剤を服用していた。処方薬の93%がスタチン剤をであった。

 レポートは、動脈硬化性の冠動脈疾患の発症を減らすために、生活改善に加えて、コレステロール低下剤、特にスタチン剤を使用することは、確固たる根拠があるとして推奨している。

 しかし、一次および二次予防ともに、スタチン剤を処方することに関しては強い批判がある。
 根拠に基づく最新の客観的な薬物治療情報を提供する事を目的にコロンビア大学に設置されている組織Therapeutics Initiative(TI)による大規模な再評価分析の結果は、一次予防のためにスタチン剤を使用することは何の利益ももたらさないことを明らかにした。

 ニューヨークのアイカーン医科大学救急医療科のDavid H Newmanは、BMJに、心疾患を持つ人でさえ96%の人は脂質低下剤による利益は得られず、2%の人は糖尿病を合併し、他の人も筋肉の損傷や記憶障害を発生するであろうと語った。

 米国内科専門医認定機構財団(ABIM Fundation)による「賢く選ぼう」(Choosing Wisely)キャンペーンでは、70歳以上の高齢者に脂質低下剤を当然のように処方することはやめようと呼びかけている。

 AMDA(The Society for Post-Acute and Long-Term Care Medicine:米国慢性期医療学会)も同様に、「賢く選ぼう」のリストにスタチン剤の使用を掲げ、高コレステロール血症や、低HDL-コレステロール血症は、70歳以上の人々にとって、重要なリスク因子であるという証拠はなく、研究結果はコレステロールが低い高齢者ほど高い死亡率を示しているとし、85歳以上の患者では、スタチン剤のリスク(認識障害、認識低下、神経障害、筋肉障害)はより増大するであろうと記している。
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 当会議では、コレステロール低下剤に関しては、設立当初よりコレステロール値を低下させることのリスク、スタチン剤そのもののリスクを指摘してきた 2,3)。
 BMJ NEWSが紹介しているCDCレポートに対する批判は、当会議の指摘と軌を一にする内容である。
 このような批判に関わらず、高脂血症治療剤の市場は4800億円(2012年)と上昇し続けている。
 スタチン剤の持つリスクを過小評価せず、費用対効果、リスク/ベネフィット比に対してシビアな対応が望まれる。(N.M)