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患者団体は資金援助先についてもっと情報公開すべきでないか(BMJ誌)

2015-02-19

キーワード:患者団体、慈善活動、利益相反、難病、稀少疾患

 医療界に対する患者団体の影響力は大きく、疾患啓発活動での中心的な役割をになったり、稀少疾患治療薬の開発を推進する役割を担うこともある。国の審議会に患者の代表として参加し医療政策へ関与することもある。場合によっては、新薬開発における製薬企業の代弁者の立場にもなる。多くの患者団体は製薬企業からの資金援助を受けており、製薬企業も社会慈善活動のひとつとして、患者団体への資金提供を積極的に位置づけているという面もある。しかし、一部の患者団体を除いて、企業からの資金提供についての情報公開は充分では無いようだ。
 
 以下はこの問題を指摘しているBMJ電子版(2014年9月29日)の論説記事(Should patient groups be more transparent about their funding?)の概要である。

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 患者団体は、医薬品へのアクセスについて、しばしば声高に叫ぶが、製薬企業との関係については何も言わない。透明度を高める方向性の医療界において、それはゆるされることだろうか?

 最近、多発性硬化症治療薬のNabiximols(商品名:Sativex、日本でも大塚製薬が開発中※1)がウェールズの公的医療制度のなかで使用できることになったのは、多発性硬化症(MS)の慈善団体であるMS Trustによる小さな勝利と受け止められている。Nabiximols(痙攣性を和らげる大麻類スプレー)へのアクセスは、以前にはそのコストの面で困難であった。MS Trustは、Nabiximolsを広く入手できるためにキャンペーンを長期間行ってきた。
 しかし、この団体は、ドイツの巨大な製薬企業でこの医薬品を販売するバイエルから2013年に5,000ポンド(1ポンド180円換算で90万円)の資金提供を受けていた。英国製薬工業協会は、ウェブサイト上で体系的に患者団体や慈善団体との全ての関係を詳細に明らかにすることを製薬会社に求めおり、製薬会社のウェブサイトを検索すると、MS Trustがバイエル以外からも多発性硬化症治療薬を持つ製薬企業であるGenzyme社から15,000ポンド(約270万円)、Biogen Idec社から50,000ポンド(約900万円)の資金提供を受けていることがわかる。しかし、この団体のウェブサイトでは、企業からの資金提供の総額が54,121ポンド(約974万円)であること以外、企業名や資金提供の目的などの情報は公開されていない。

 MS Trustの慈善活動のケースは、患者団体の一般的な利益相反問題の一部の例に過ぎない。ほとんどすべての患者団体は、製薬会社から出資資金提供を受け、多くはその会社の製品の販売に対して大きな力を持っている。しかし、患者団体のウェブサイトからの情報には差がある。いくつかの団体はウェブサイトの主要なページに明確で包括的な資金提供に関する情報を持っているが、多くの団体のウェブサイトでは見つけづらい年次報告書のエリアに一部が記録されているのみである。

製薬会社は、患者の治療やケアを改善させるという共通の目的のために患者団体に財政援助することは論理的であると考えている。また、多くの患者団体は、企業からの資金提供にかかわらず、彼らのために開発され承認された全ての薬が彼らに利益をもたらすという立場で、 新しく承認された薬へのアクセスのためのキャンペーンを行う。
 患者団体の独立性の問題は、一つの企業からの資金提供の限度を総所得の割合できめることで解決できる。しかし、彼らが独立していると広く患者や一般大衆、および政策立案者によって認められるためには、他の分野と同様の透明性が求められる。

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 製薬会社の多くは、これまで利益を上げてきた生活習慣病分野からは画期的な新薬が生まれる可能性が小さくなってきたことから、稀少疾患治療薬などの隙間の分野に生き残りをかけている。難病の稀少疾患の患者にとっては、待ち望んでいた治療薬が開発される可能性が高まるわけだが、一方ではますます患者団体の影響力は大きくなっていくと考えられる。(G.M)


※1
Nabiximols(商品名:Sativex)は、多発性硬化症(MS)患者の神経因性疼痛、痙縮などの症状の緩和に用いられるカンナビノイド口腔用スプレーである。組成、処方、用量の規格化された製薬製品だが、それでも事実上大麻植物のチンキである。イギリスの会社GWファーマシューティカルズによって開発され、2003年5月、GWファーマシューティカルズとバイエルは、商標名サティベックスで販売されるGWの大麻に基づいた薬草抽出物製品の独占販売契約を結んだ。

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