制吐剤ドンペリドン(ナウゼリン(R)ほか)は市場撤去すべき
2014-05-14
(キーワード: ドンペリドン、プレスクリール、市場撤去)
悪心・嘔吐にドンペリドン(ナウゼリン®、他に多数のジェネリック品)が日本でも多用されている。ドンペリドンには心臓リズム異常と突然死の副作用があり、最近(2014年3月)も、欧州医薬品庁(EMA)が投与量を低くし使用期間を短くして用いるよう推奨した。これに対し、フランスの医薬品監視団体プレスクリールは、患者の安全のためにドンペリドンの市場撤去を求めている。
以下は、プレスクリール・インターナショナル誌2014年2月号とプレスクリールのウェブサイトに2014年3月に掲載された記事(※1)の要約である。
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国際一般名であるドンペリドンの接尾語が向精神薬のリスペリドン(リスパダール®、他にジェネリック品)と同一なことに示されるように、ドンペリドンは向精神薬のひとつで、「隠された」神経遮断剤と言える。ドンペリドンは1980年代のはじめから、向精神薬としてではなく、悪心・嘔吐やさまざまなありふれた消化管不調の軽減に用いられてきている。ドンペリドンのこれらの適応に対する効果は限られたものにすぎないが、心臓リズム異常と突然死という重篤な副作用を引き起こす。
神経遮断剤は患者に心臓リズム異常のリスクをもたらすことが知られている。ドンペリドンも心電図のQT間隔を延長し、心不整脈をもたらす。1986年にドンペリドンの注射剤が市場から撤去されたが、経口剤は販売が続けられた。2005年以降、カナダとオランダで行われたいくつかの疫学研究が、ドンペリドンを用いた患者では突然の心臓死が1.6〜3.7倍も起こりやすいことを示した。2011年の終わり近くに、フランスの医薬品規制庁と主要な製薬企業が突然死のリスクについて医師と薬剤師に知らせた。欧州医薬品庁(EMA)は2014年3月ドンペリドンの投与量を少なくし使用期間を短くして用いるよう推奨した。しかし、高用量の投与につながる20mg製剤はそのまま販売されている。とられた対策は患者を守るのに十分でなく、単に責任を医療専門家に転嫁するものにすぎない。
2014年2月19日にプレスクリールは、当局から使用を許諾されたフランスのレセプトデータを用い、フランス成人の7%(300万人)が2012年に少なくとも一度はドンペリドンを使用していることを示した。これらのデータと突然死の発生率から検討して、フランスで2012年にドンペリドンが25〜120人の突然死をもたらしていると推定された。いまこそこの薬の使用を中止すべきときである。
この薬を使わなくとも患者にはより良い解決法がある。しばしば食事の調節が効果的である。薬が欲しいという患者に対する一つの選択肢は無害なプラセボ(偽薬)の使用である。胸焼けのする患者にはプロトンポンプインヒビター(PPI)のオメプラゾール(オメプラゾン®ほか)などがドンペリドンよりも良い。胃腸運動調節剤の使用が必要で正当化されるまれな場合には、神経遮断剤ではあるがドンペリドンに比し副作用の少ないメトクロプラミド(プリンペラン®ほか)を注意深く用いるべきである。
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2012年にフランス成人の7%が少なくとも1度はドンペリドンを使用しているとあるが、日本においてもドンペリドンが用いられる頻度は高い 。プレスクリールの警鐘は、日本人にとっても傾聴されるべきであろう。
なお、プレスクリール誌はこのようにすべてのドンペリドン含有製剤の市場撤去を求めているが、文中にある2014年3月7日の欧州医薬品庁PRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)の推奨内容について、日本での製剤とその含有量の情報を含め付記する。欧州で古くから用いられてきたドンペリドン製剤は、各国の医薬品庁がそれぞれに承認しており、OTCとして承認している加盟国もある。PRACは、20mgの経口製剤と10mg、60mgの坐剤は今後使用を推奨せず、販売中止すべきとしている。また、小児や坐剤での有効性を裏付けるデータは乏しく、さらに研究を実施するよう求めている。日本(すべて医療用)には20mgの経口製剤はなく、坐剤は10mg、30mg含有であるが、ドライシロップ小児用など小児適応の製剤がある。 (T)
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