製薬企業の不正な商行為にはさらに厳しい制裁が必要である(米国・パブリックシティズン)
2014-01-09
(キーワード: 製薬企業、不正商取引行為、制裁、ジョンソン&ジョンソン社、ノバルティス社、パブリックシティズン)
ノバルティス社のディオバンについての臨床研究で同社も深く関与した不正があり、不正に作製された論文を販売促進に用い同社が巨額の利益を得た問題で、当会議は、2013年11月1日、ディオバン事件に関し、ノバルティスファーマ社を薬事法違反及び不正競争防止法違反をもって、東京地方検察庁に刑事告発した(※1)。
日本ではこのような製薬企業の不正に対する対処が甘いが、米国では日本と比較して格段に厳しく対処されている。
以下は、ジョンソン&ジョンソン社に対して民事罰と刑事罰が科された際の2013年11月4日パブリックシティズンの声明(※2)、ノバルティス社に対して民事罰と刑事罰が科された際の米国司法省の声明(※3)の要旨である。
日本の現状と正しい対処を考えるうえで参考となるので、それぞれの要旨を紹介する。
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【ジョンソン&ジョンソン社】(パブリックシティズンの声明)
今日(2013年11月4日)ジョンソン&ジョンソン社がいくつかの刑事責任の罪を認め、連邦政府と州政府に22億ドル(約2200億円)の刑事・民事罰金を払うとの表明を発表した。これは、和解額としては過去3番目に高額で、2012年7月にグラクソ・スミスクライン社が30億ドル(約3000億円)を支払った事件から1年しか経過していない。今回のジョンソン&ジョンソン社の和解金の大部分(17億ドル、約1700億円)は、同社の統合失調症治療剤リスパダールの適用外使用(オフラベル)販売促進の違反に対するものである。
罰金のうち刑事罰に相当する金額は4億ドルであり、この他に同社は高齢者・子ども・精神障害者に対する適応外使用で民事罰の和解金として13億ドル(1300億円)を支払う。政府は、とりわけ同社がFDAのたびたびの警告を無視して高齢者と子どもへの違法な投薬を奨励したことを問題としている。
しかし、今回の和解は企業にとって茶飯事のことである。2012年のパブリックシティズンの報告によれば、ジョンソン&ジョンソン社は1991年から2012年7月18日までにもさまざまな不正行為で23億ドル(約2300億円)の刑事・民事の罰金を支払っている。ジョンソン&ジョンソン社の常習の不正行為は、企業にとってはこの多額の罰金も不正に得た売上金と比較すれば10分の1程度で軽いものである。
再発を防止するためにはもっと多額の罰金とこのような不正行為に責任を持つ者の刑務所での刑罰が必要である。
【ノバルティス社】(米国司法省の声明)
米国司法省は、本日(2010年9月30日)、ノバルティスファーマ社(ノ社)が医薬品の不法なマーケティングによる刑事責任と民事責任をとるために4.225億ドル(当時の換算レートで約350億円)を支払うことに同意したとアナウンスした。
政府と合意した協定によれば、ノ社は食品・医薬品・化粧品法(FDC法)に違反してトリレプタルの禁止されているオフラベル(適応外使用)販売促進を行った不正行為の罪を認め、1.85億ドル(約153億円)の刑事罰金を支払う。FDAはトリレプタルを抗てんかん剤としてしか承認していないが、ノ社は同剤を神経障害性の痛みなどに用いる販売促進活動を行った。
刑事罰金に加えて、ノ社はトリレプタルの他、ディオバン、ゼルノルム、サンドスタチン、エックスフォルジ、テクターナの5剤を違法に販売し、政府のヘルスケアプログラムにその費用が不正請求されるという偽請求法(the False Claim Act)違反の民事申立て(allegation)の和解のため2.37億ドル(約196億円)を支払うことに合意した。トリレプタルについてはヘルスケアプログラムで認められない種々の適応への不正な販売、他の5剤については処方した医師にわいろ(kickback)を渡すという不法行為である。
この民事解決金の配分は、連邦政府に対し1.49億ドル(約124億円)、州政府に対しては8800万ドル(約73億円)である。
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パブリックシティズンが指摘しているように違法行為を思いとどまらせるためにより厳しい社会的制裁が必要である。日本の現状はこの米国に比しても非常に遅れた状況にあり、速やかな改善が必要である。(T)