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フランスの医薬品行政改革法案が両院を通過し2012年初めにも成立へ

2012-02-02

(キーワード: フランス医薬品行政改革、法案両院通過、メディアトール薬害)

 やせ薬メディアトールが引き起こしたスキャンダル(※1)を受けて、フランスのザビエル・ベルトラン保健大臣が行政の信頼回復のために準備した医薬品行政改革法案(※2)が、両院を通過し2012年初めにも成立へと向かっている。スクリップ、ピンクシート両誌の記事から概要を紹介する。
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[フランスの医薬品市場改革が実施に近づく] (ピンクシート誌2011年10月24日号記事から)

 フランスの医薬品市場の再構築が、下院が2011年10月4日に医薬品行政改革法を可決したことで、一段階前進した。同法は、医薬品庁に医薬品監視の責任を増加させ、名前も医薬品・ヘルスケア製品の安全性のための政府機関とすることで、その役割を革命的に変革させることになる。この法律はメディアトール事件の教訓を踏まえたものとして提案されているが、医薬品庁の経費は企業の拠出金からではなく、健康保険方式で支払われる。医薬品庁はその決定と決定過程について透明化することを要求される。また、医薬品庁は医薬品承認をめざす製薬企業のすべての臨床試験データにアクセスできるようになる。同法はまた、1対1でのMRの病院訪問を禁止し、利益相反を避けるために、すべての医療従事者に企業との関係について情報公開するように求めている。同法は,薬害を防止するために内部告発をした人の地位を保全する。

[フランス医薬品行政改革法を上院が修正を加え可決。下院版と調整へ](スクリップ電子版2011年10月28日記事から)

フランス上院が2011年10月27日、医薬品行政改革法を可決した。その際に上院はいくつかの修正を加えたことから、下院との調整にはいる。上院の修正案では、新薬に標準治療との直接比較試験を要求し、保険償還の敷居が高くなっている。これは新薬に最高の科学的な水準レベルを求め、ミーツ―薬(いわゆるゾロ新薬)を防ぐことを目的としている。求められる高い医学的ベネフィット(利益)は、保健省の透明化委員会が決定し、保険償還に反映させる。また、企業が行政から求められている義務を果たさなかった結果、患者が薬害を被った時には、集団訴訟を起こすことを認めている。他の条文では、未承認薬の暫定的承認(ATU、同国のコンパッショネート使用制度)のルールを明確化し、企業の悪用で患者がリスクを被るのを防止し、未承認薬の適正な使用のためにウェブサイトを設け情報提供をする。上院の修正案は、医薬品庁(Afssaps)の名称を、医薬品以外の医療機器や他のヘルスプロダクツの安全性規制も同庁がすることを強調するため、下院の提言するANSM(医薬品安全庁)をさらに推し進めて、Afseps(フランスヘルスプロダクツ安全庁)とする提言をしている。上院の修正案は、現在下院との協議・調整のため、下院に戻されている。両院が合意に達しない場合は、下院・上院合同委員会が設定される。

[医薬品行政改革法が2012年初めにも成立へ] (ピンクシート2011年11月21日号記事から)

 下院案では、利益相反に関して、医薬品庁(Afssaps)の委員メンバーが過去5年間の製薬企業とのつながりを明らかにし、定期的に情報を更新することを求めていた。上院案では、これをさらに保健省、医学研究所、国立がん研究所に広げる。これらはメディアトールと同様のスキャンダルの防止を目的としている。
 上院はさらに、既存の治療に付加する利益を証明するための比較試験を企業に要求する権限を医薬品庁に与えることにした。しかし、EUの法律ではこの種の比較試験の実施を企業に求めていないため、こうした権限の付与の実現は難しいように思われる。
 上院はさらに製薬企業に対する集団訴訟を可能にした。成り行きを注視する有識者たちはこの提案が最終的にとりいれられるチャンスはあまりないとみている。
 上院版と下院版で相違する事項は立法調停委員会が調停し、その決定は年内に出される予定である。もし妥協が成立しない場合は、下院が最終決定権を有する。法律は大統領の承認をもって成立する。
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 フランスでは、メディアトール薬害の検証を通じて、このように医薬品行政の大きな改革が実現しつつある。その改革の内容は、今後の日本の医薬品行政の改革の参考になることが多い。      (T)
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