「ノーモア・メディアトール」―フランスの薬事行政改革法案を秋に議会提出
2011-10-20
(キーワード: フランス薬事行政改革、メディアトール、法案提出準備)
メディアトール・スキャンダル(※1)を受けて、フランスのザビエル・ベルトラン保健大臣が行政の信頼回復のために、薬事行政改革の法案を秋に議会提出するよう準備を進めている。その内容をスクリップ誌電子版2011年6月27日が伝えており、要旨を紹介する。
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フランス保健大臣の ザビエル・ベルトラン氏は、フランスの医薬品規制システムにおける損なわれた信頼の回復のために、規制庁の名称変更や医薬品の評価の透明性を高めるなどを含む多くの方策を講じていることを語った。彼の計画が実行されれば、新薬の承認には既存の対照薬と比較した臨床試験が必要となり、また利益相反ルールが厳密に適用される。市民の信頼回復には製薬企業が改革においてその役割を果たさねばならないと大臣は語った。
あらたな方策には、有害事象報告の改善が含まれる。また適用外使用の監視を含め医薬品の市販後監視が強化される。規制庁の名称は医薬品安全庁(the National Agency for the Safety of Medicines, ANSM)に改名され、その財政基盤は製薬企業から直接はいる資金でなく国からの交付金によるものとなる。多くの方策は3か月にわたるコンサルテーション(意見聴取)とそれに続く報告書で議論されていることと一致している。
ザビエル・ベルトラン保健大臣によって概説されている方策は、秋にフランス議会に提出される法案に編まれる。製薬企業の業界団体であるLeemは、とられるアクションの大多数は患者の利益に関するもので、保健安全を改善するものであり、透明性を改善し、利益相反を予防するためのものであると語った。ただLeemは医師生涯教育への新たな企業が支払う税金とMR活動の規制強化について頭を痛めている。
記者会見でベルトラン保健大臣は、改革の目的はひとつで、メディアトール・スキャンダルのような薬害を 二度と繰り返さないことにあると語った。また、その重点としてはメディアトールを長い間市場撤去できなかった利益相反管理の失敗に取り組むことにあると語った。フランスはこの面で前進したが十分でなく、さらに徹底が必要と大臣は語った。透明性を最大にするためにヘルスケア領域に関与するすべてのひとびとは企業との関係について明らかにせねばならない。医薬品安全庁(ANSM)の委員会に企業との関係が明らかになった専門家がはいっていたなら、その委員会の決定や意見は無効と宣言されるだろうと大臣は語った。そして、医師専門家、患者団体、業界メディアは例外なく企業との関係を公表せねばならない。委員会の議事日程と議事録は少数意見の記載も含めすべて公表されると大臣は語った。製薬企業の支払いは医薬品安全庁に対してでなく政府に対してなされ、国からの交付金の形で医薬品庁に支払われるようになる。
医薬品の承認審査では、新薬の臨床試験は既存の競合薬との比較が必要となる。承認に際してはどれだけ治療的な価値を付加することができたかが考慮される。プラセボと比較していいというのでなく、患者に対する真の利益があるかが問題となる。また、患者に対する利益が不十分なものは保険償還されない。
製薬企業は今までの医師との接触の仕方を変えねばならない。医師の必要としているのは公共の独立した質の高い情報である。MRの医師訪問と情報提供の基本となる仕方についてのコンサルテーション(意見聴取)が実施されるだろう。個々のMRの病院医師訪問は禁止され、チーム訪問に換えられるだろうと大臣は語った。企業は医師生涯教育の運営に必要な新たな資金を支払うことになるだろう。
その他の施策としては、適応外使用規制の強化、有害事象報告の簡略化と患者からの直接報告の推進、古い製品のリスク・ベネフィット再評価の実施、薬剤疫学の強調と薬剤疫学研究を行う行政の専門部局の開設、承認条件とされた市販後研究を行わない企業への承認の一時停止を含む罰則の強化などがあげられている。
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バイオックス薬害が米国の薬事行政を大きく改革したように、フランスではメディアトール薬害がいま薬事行政を大きく改革させつつある。日本では薬害肝炎の薬事行政改革への影響がこれに該当する。2010年4月「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」が出されたが、その具体化のための監視を強めていく必要がある。(T)
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