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フランス医薬品庁が監視継続医薬品77品目のリストを公表、目印のロゴマークも付けることを言明

2011-05-20

(キーワード: フランス、監視継続医薬品リストの公表、目印マーク付与、Mediatorスキャンダル)

 2009年11月、それまで33年間にわたりフランスで処方せん薬として販売されてきた食欲抑制剤(抗肥満剤)ベンフルオレックス(商品名: Mediator)が市場から撤退した。同剤は肺高血圧と心臓弁膜症を来たし、同剤による死亡者は500人を上回ると推定されている(※1)。フランス医薬品庁(Afssaps)の同剤に対する対応の遅れが社会問題となり、2011年1月医薬品庁の長が責任を取って辞任した。「Mediatorスキャンダル」と呼ばれる事態である(※2)。
 医薬品庁はこのスキャンダルを契機に、2011年2月2日、監視継続医薬品77品目のリストを公表し、2013年からはこれらの医薬品の容器に目印のロゴマークをつけることも言明した。これらの医薬品には当会議が販売中止を求めてきた糖尿病剤アクトスなどが含まれている。注意すべき医薬品に独自のマークをつけるのは、英国が販売開始後一定期間処方時に注意するよう医薬品名に▼印をつけている例があるが、監視継続医薬品にマークをつけるのはフランスがはじめてとみられる。
 以下は、ピンクシートディリー2011年2月3日号記事からの要約である。
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 現在は市場から撤去されているセルビェ社のベンフルオレックス(商品名: Mediator)をめぐるフランスのスキャンダルが契機となり、フランス医薬品庁は継続監視の対象としている77の医薬品のリスト公表を表明した。医薬品庁の透明性の欠如と医薬品監視プロセスの欠点がスキャンダルをもたらした原因のひとつと指摘され批判されていた。
 2005年以来、リストの対象となった医薬品の製造販売者はリスク管理計画の立案を求められている。リストには最近18の医薬品が追加されたが、これらの医薬品も現在リスク管理計画の立案が進められている。
 フランスのメディアは、ベンフルオレックスの副作用のシグナル(これまでに知られていない医薬品との因果関係が疑われる報告された情報)は30年以上前から明らかになっていたのに、フランス医薬品庁はこれを無視してきたと非難している。1年以上にわたって話題になっているこの事件は、欧州で最も透明性の高い医薬品庁とされてきたフランス医薬品庁のイメージを汚した。2011年1月、透明性と医薬品監視の提唱者である医薬品庁の長(Jean Marimbert氏)がスキャンダルの責任を取って辞任した。
 そして医薬品庁は監視継続医薬品のリストを公表し、2013年にはリストに掲載された医薬品の容器に特別のロゴマークを付けるとも言明したことで、医薬品庁は公衆に「Mediatorスキャンダル」の教訓を真剣に受け止めていることを示したのである。
 このリストには、白血病薬「グリベック」(一般名: イマチニブ)、糖尿病薬「ガルバス」 (ビルダグリプチン)糖尿病薬「ジャヌビア」 (シタグリプチン)、脳卒中剤「プラザキサ」(ダビガトラン)のような医薬品が含まれている。医薬品庁は公表にあたり、患者に自己判断でこれらの医薬品を中止せず、医療専門家に相談するよう呼びかけている。
 このリストにはまた、糖尿病剤「アクトス」(一般名: ピオグリタゾン)、抗肥満剤「アライ」(オルリスタット)の2医薬品も含まれている。これらの医薬品については、それらの販売承認にフランス医薬品庁は賛成でなかったが、欧州医薬品庁(EMA)が中央承認した経緯がある。「アクトス」は心循環イベントと膀胱がん、「アライ」は膵臓障害と肝障害を起こすことが問題となっており、FDAは現在「アクトス」のレビューを実施中である。
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 副作用のシグナルが同定された医薬品については、米国FDAが2通りのやり方で率先して医療専門家、患者・市民への情報公開を行っている。欧州はそうした情報公開が遅れていたが、今回フランス医薬品庁が監視継続医薬品のリスト公表を行い、そしてリストに掲載された医薬品の容器に特別のロゴマークを付すと言明したことは注目される。日本は監視継続自体を体系的に行なっていないのであり、これら欧米の動きに見習う必要がある。   (T)