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EU議会、全加盟国に患者からの有害事象直接報告制度を設置する新法を可決

2010-12-20

(キーワード:患者からの副作用報告制度、EU全域)

 欧州議会では、2010年9月22日、医薬品安全監視の枠組みを強化する目的で提案されたEU立法の採決を行い、圧倒的多数で可決した(※1)。2012年初めにはEU全域で施行される見込みである。この法案の中には、医薬品監視の強化のため、全加盟国で患者からの有害事象の直接報告制度を義務づけるとの内容が含まれている。医薬品安全監視新法の内容については、2010年7月15日付スクリップ電子版に掲載されているので紹介する。以下はその要旨である。
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 医薬品安全監視法案は、欧州委員会によって作成された3つの部分からなる医薬品一括法案を要素としており、製造販売後の調査の対象となった医薬品には欧州全体で統一した目印をつけることを提案している。
法案の全体的な目的は、EUの医薬品安全監視ネットワークを強化し、副作用報告をより効果的に確保するようにすることである。提案されたルールでは、患者への情報リーフレットには、その医薬品が集中監視下にあることを指し示すために、欧州全体で統一した目印が掲載されなければならない。すなわち、その医薬品について追加調査(intensive monitoring)が行われていることやその理由を明確にしなければならないことになる。また、患者に対し、起こりうる副作用を知ってもらうよう警告し、そのような副作用があれば国の所轄官庁に報告するよう促すことになる。
 同法案はまた、EU全加盟国に対し、患者からの直接の副作用報告を認めるためのシステムを構築することを義務づけている。この点については議論もあるが、患者からの直接報告制度を既に実施している国(例えばイギリスのイエローカードシステム)では、副作用についてのより正確な説明がなされているというエビデンス(根拠)がある。
 さらに、同法案は、新しい医薬品安全監視リスク評価委員会(PRAC)をEMA(欧州医薬品庁)に設置することを求めている。委員会は、関連のある科学専門家で構成され、患者団体の代表や医療関係者も含まれている。EMAの副作用電子報告データシステムに関しては、各国に分かれたものではなく、1つの中央データベースに報告すればよいことになる。そのデータベースの情報は、公に利用でき、調査を行いやすくなると思われる。
 また、同法案では、患者が医薬品の安全性のすべての側面について情報を得られるような新しいEUの医薬品ポータル(入り口となるウェブサイト)を作ることを求めている。より多くの副作用報告がなされる結果となるか否かは、新しい方法が公に認知される程度と、新しいポータルが手助けとなるか否かにかかっている。
 法案は、患者向け情報リーフレットのデザインをより読みやすく、また理解しやすく見直すことをも求めている。患者が本質的な情報に明確にアクセスできるようにデザインされるよう見直す必要がある。
日本においても、薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会の最終提言において、市販後安全対策において、患者とのリスクコミュニケーションの円滑な実施がなされるべきである旨提言されており、その中で、患者からの副作用報告制度の創設の必要性が述べられている(※2)。医薬品監視制度を強化する枠組みの中で、患者からの直接報告は必要不可欠なものであり、日本においてもこのような制度を導入するためのモデルとして、EUの動向が注目される。(MG)