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ロシグリタゾンの心筋梗塞リスクの存在を否定的に記した著者の中には、製造企業と利益相反のある者が多い

2010-08-11

(キーワード:ロシグリタゾン、利益相反、糖尿病薬、心血管系リスク)

 イレッサやタミフルの評価を行った研究者がこれらの製造企業と利益相反の関係にあったことについて、当会議では繰り返し問題解決のための要望書を出してきた(※1〜4)が、要望の理由のひとつに、カルシウム拮抗剤は安全と評価した論文の著者の多くが製造企業と利益相反の関係があったという調査結果(NEJM 1998;338:101-6)をあげた。
 英国医学雑誌BMJの2010年3月18日付Online Fast(出典参照)には、NEJMの論文と同様の手法で、糖尿病薬ロシグリタゾン等に関する論文を対象として行い、同様の結果を示す研究論文が紹介されている。その概要は日本のマスコミでも坪野吉孝東北大学教授によって紹介され、「企業と研究者の結びつきが、研究者の意見の独立性を損なう危険性を、今回の結果は示す」と指摘されている。(※5)。
 糖尿病の治療薬グリタゾン類(ピオグリタゾン=商品名アクトス[日本では武田薬品から発売],ロシグリタゾン=商品名アバンディア[日本では未発売])のリスクと、医師の利益相反との関係に関する情報は、本欄で何度も紹介してきた(例として、※6、7)。以下に、今回のBMJ論文の要旨を記すが、上記坪野教授の指摘から考察すれば、「研究者の意見の独立性を損なう」ことは、すなわち「企業に甘い評価をする」、つまり、「医薬品の有害作用の評価を甘くして、副作用被害者を増やしてしまう」危険性につながることを示唆する調査結果と言えよう。                                   
 米国メイヨークリニックのWang医師、Montori教授らは、ロシグリタゾンの心血管系リスク(副作用)に対する見解と製薬企業との関係を調べるため、2009年4月にScience and Scopusのウェブで参照できる202本の論文を調べた。うち108本(53%)には企業との利益相反に関する記載があり、90人(45%)が利益相反を有していた。ロシグリタゾンの心筋梗塞のリスクについて否定的な見解を記した著者は、肯定的な見解を記した著者に比べて、ロシグリタゾンのメーカーと金銭的な利益相反を有する傾向がみられた。すなわち、メーカーと金銭的な関係を有していた著者の割合は、ロシグリタゾンのリスクの存在を否定的に記した著者では31人中27人(87%)、中立的な見解を記したのは84人中25人(30%。注:この数字は論文の表2では24%と記されており、訂正して記す。)、リスクの存在を肯定的に記したのは65人中13人(20%)であった。この結果、利益相反を有する著者の割合は、リスクを上げないとした場合が上げるとした場合の4.35倍(注:論文では4. 29倍となっている)で、明らかに有意な差がみられた。以上はリスクについてだが、ロシグリタゾンの使用に関しても、同様の結果が得られた。著者らは、この結果から、これが直ちに因果関係を示すものではないが、信頼ある科学的記録のためには、利益相反開示手順の更なる改変の必要性を強調する結果であると結論している。  (KK)

出典 British Medical Journal 2010;340:c1344
http://www.bmj.com/cgi/reprint/340/mar18_1/c1344?maxtoshow=&hits=10&RESULTFORMAT=1&andorexacttitle=and&andorexacttitleabs=and&andorexactfulltext=and&searchid=1&FIRSTINDEX=0&sortspec=date&volume=340&firstpage=c1344&fdate=1/1/1981&resourcetype=HWCIT