ゴーストライティングの禁止を表明している米国製薬協の新ガイドライン
2010-04-27
(キーワード:米国製薬協ガイドライン、臨床試験の実施・結果報告、ゴーストライター禁止)
欧米の大手製薬企業がプロのライターに書かせた論文を、著名な医師・研究者の名義で医学雑誌に掲載してきたことを注目情報でとりあげてきた(※1-※9)。ゴーストライティングに対して大手製薬企業の団体である米国製薬協(PhRMA)は現在どのような方針で臨もうとしているのか?
米国製薬協は、臨床試験の透明性を高くするために2009年10月1日に発効した「臨床試験の実施と臨床試験結果のコミュニケーションに関する指針」(※5)で、医学論文の著者(Author)に関する基準を強化、国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)の基準に合わせることで、明確にゴーストライター禁止の方針を打ち出しているので紹介する。なお、日本の大手製薬企業団体である日本製薬協ウェブサイト(自主基準の項目)には「臨床試験の登録・結果公開に関する実施要領」(2005)の文書がある(※6)が、論文の著者に関する記載はない。
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国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)の基準と主要な医学雑誌の著者(Author)についてのガイドラインと一致して、次の1-3の条件のいずれをも満たす者を著者と定める。
1) 研究の概念・デザイン、データ取得、データ解析・解釈に実質的な寄与をした者
2) 重要な知的内容を含む原稿を書くかまたは修正した者
3) 出版された最終原稿を承諾した者
逆に、そうした関与をしていない者は著者として扱わない。
医学雑誌は著者として掲載する人数を制限することがあるが、会社(製薬会社)は上記の3つの条件を満たす者を著者名簿に記載せねばならない。それぞれの著者は論文内容のふさわしい部分についての公の責任を果たす仕事に十分参加していなければならない。大規模な多施設臨床試験では、研究グループは原稿に対する対外的な責任者を決めておかねばならない。資金の獲得、データの収集、あるいは研究グループの通常の監督を行った者は、それのみでは著者として扱われない。スポンサー会社の者か外部の者かにかかわらずすべての著者は、計画された出版をサポートするのに必要な適切な統計表、図、レポートを与えられねばならない。
貢献はしたものの著者としての資格を有さない者は,謝辞に記載する。
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国際的な動きが強まっている中、米国製薬協が自主ガイドラインにゴーストライティング禁止を明記したことの、日本への影響が注視される。
この米国製薬協のガイドラインには、ゴーストライティング以外にも次のような注目される記載がある。
・利益相反の可能性のあるあらゆる財政的・個人的関係について,記事や手紙にかかわらず、国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)の医学雑誌原稿におけるに準拠して開示する。
・医学論文の著者は、その研究を設計し,データを集積・解析し,報告を書く際に,スポンサー(臨床研究を企画し、実施し、ないし資金調達をする個人または組織)の役割を記さなければならない。
・販売承認された医薬品のみならず,今後は承認されなかったり,開発を中止した医薬品についても臨床試験の概要結果を公表すべきである。
(NM & T)
- 関連資料・リンク等
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- ※1 企業主導のランダム化臨床試験論文におけるゴーストライターの存在
- ※2 医学論文のゴーストライター問題にどう取り組むべきか
- ※3 BMJ誌が「製薬企業と、医療専門家、患者との理想的な関係とはどうあるべきか?」を特集
- ※4 ゴーストライターによる医学論文作成が裁判資料から明らかに
- ※5 グラクソは、パキシルの販売促進のために“ゴーストライティング”プログラムを使用
- ※6 Pros Medicine編集者たちがゴーストライティングと闘う論説
- ※8 米国の代表的医科大学の多くが、ゴーストライティングに関するルールを持っていない
- ※9 ゴーストライティング問題で、医学系出版社も被告にー抗精神病薬リスパダールに関して
- ※10 米国製薬協ガイドライン
- ※11 日本製薬協自主基準
- ※7 タミフルのコクランレビューが明らかにしたロシュの情報操作