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ゴーストライティング問題で、医学系出版社も被告に−抗精神病薬リスパダールに関して

2010-04-15

(キーワード:ゴーストライティング、リスパダール)

 抗精神病薬リスパダールに関して、服用した男性の乳房が女性化したとして、製造するジョンソン&ジョンソン社(J&J社)に対する訴訟が提起されている。この訴訟では、J&J社のみならず、ゴーストライティングに協力したとして、医薬系出版社であるエルゼビア社も被告となっている。
 医薬品による被害をめぐって、ゴーストライティングに関与したとして、医学系出版社を訴えることは、珍しいが、今後のゴーストライティングのあり方に関して、参考になることから紹介する。なお、これを採り上げたのは、ピンクシート2010年1月25日号であるが、同誌はエルゼビア社の子会社が発行している。

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 リスパダールに関しては、投与した患者が糖尿病になったとして、J&J社は、製造物責任訴訟を提起された。今回は、これを服用した青少年の乳房が女性化したとして訴訟を提起されている。
 原告の代理人によると、1月12日にフィラデルフィア州で10件の訴訟を提起し、ペンシルバニア州で20〜30件の訴訟を提起する方針とのことである。また、ニュージャージー州でも既に10件が提訴されている。
 この訴訟では、J&J社だけでなく、エルゼビア社も被告となっている。同社は、本誌の親会社である。
 原告の主張によれば、エルゼビア社は、リスパダールに関して、ゴーストライターによる記事を作り出したことについて責任があるとしている。
 訴訟では、医学専門誌にゴーストライティングによる記事を掲載したり、学会でポスター、アブストラクト、金銭提供を受けた者による報告を通じてリスパダールに関して虚偽や誤った情報を提供したことも問題となっている。
 オーストラリアでのバイオックスに関する訴訟において、昨年、エルゼビア社がメルク社とともに被告となったことは、今回のような事態に至る可能性を示していた。
 原告側代理人は、バイオックスに関して、メルクが刊行物の発行のために金銭をエルゼビア社に支払ったことを明らかにした。その刊行物は"The Australasian Journal of Bone and Joint Medicine"と題され、一見するとピアレビューをしている雑誌に見えるが、実際には、メルク社が後援する論文をまとめたものだった。
 エルゼビア社は、こうした販促雑誌を通じて、バイオックスの販売促進に加担したことを謝罪した。
 そして、スポンサーがついている出版に関して、ガイドラインを改定した。
 すなわち、関与の程度にかかわらず第三者が関与する出版に関してチェックする委員会を設置することとした。そして、昨年、草案を示した上で、今月(2010年1月)には、スポンサーが編集の意思決定に関与しないことやスポンサーの開示を確実にすることとした新しいガイドラインを出した。
 現在では、ゴーストライティングは許されないようになっている。
 こうしたゴーストライティングの制限は、バイオックスに関する政府とメルク社の訴訟や、セレブレックス、ベクストラに関する政府とファイザー社の訴訟における和解条件にもなっている。

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 医学・薬学論文におけるゴーストライティングの問題は、これまでも何度も採り上げてきた(※1〜4)。また、薬害エイズ和解10周年記念企画「くりかえされる薬害の原因は何か」(2006年12月開催)でも、著名な精神薬理学者であるデーヴィド・ヒーリー教授は、「科学の外観をまとまったグローバル・ビジネス」―The Human Laboratory―という題の講演でゴーストライティング問題を指摘している。
 今回の注目情報は、薬害が発生したときには、ゴーストライティングに加担した者に対する責任追及もあり得ることを示しており、大きな警鐘を鳴らすものとして注目すべきである。
 我が国では、ゴーストライティング問題についてあまり意識されていないように思われるが、今後の取り組みの強化が必要である。  (NM)