注目情報

  1. ホーム
  2. 注目情報

糖尿病の発症予防には、薬物治療よりも生活習慣改善の効果が大きい

2010-02-26

(キーワード: 2型糖尿病、インスリン非依存型、糖尿病の予防、メトホルミン、ライフスタイル、DPP、 DPPOS)

 「糖尿病予防プログラム(DPP)」がNIH(米国国立衛生研究所)の主導により全米27の医療センターで1996年にスタートしたが、2009年までの平均10年にわたるフォローアップの分析結果が得られ、ランセット誌2009年11月14日号に掲載された(※1)。
 インスリン非依存型(2型)糖尿病のハイリスク者およそ4000人を選びフォローアップしたものである(訳註1)。ランダムに3群に分け、ライフスタイル強化指導群(ダイエット、運動)、メトホルミン服用群、プラセボ群とした(訳註2、3)。
 既に、1996年から1999年の3年間の結果は2002年ニューイングランド医学雑誌に掲載されている(※2)。これによると、糖尿病発症率(1年あたり、かつ100人あたり)は、ライフスタイル群4.8人、メトホルミン群7.8人、プラセボ群11人で、ライフスタイル群とメトホルミン群ではプラセボ群に比較し有意に少ない。また、ライフスタイル強化群の方がメトホルミン服用群より有意に効果が大きかった。
 3群の参加者のフォローアップの継続に際し、2002年にはライフスタイルの強化指導の有効性を活かし、メトホルミン群とプラセボ群にもライフスタイルの強化指導を行う新たな“DPPOS”すなわち「糖尿病予防プログラム評価研究」と題するプロトコルをスタートさせた(訳註4)。DPPOSは10年のフォローアップのうちの後半の平均5.7年である。このDPPOSを分析したランセット誌は、興味深いことに、ライフスタイル群と他の2群で発症率の有意差が認められなくなったと報告している(発症率はライフスタイル群5.9人、メトホルミン群4.9人、プラセボ群5.6人)。即ち、3群に介入したライフスタイル強化指導が効を奏したことになる。前半のDPPデータにDPPOSを加えた10年を通して分析すると、発症率は、ライフスタイル群とメトホルミン群ではプラセボ群に比べて各々34%、18%減少したことになり、ライフスタイルの強化指導の有効性は10年間持続したと評価した。
……………………………………………………………………………………

 2型糖尿病患者の多くは肥満していると言われるが、このプログラムに参加した人はすべて肥満した人である。米国では1000万人がハイリスクの範囲に入っていると言われており生活習慣の改善の効用は大きいことになる。
 当初このプログラムには4群として、グリタゾン(トログリタゾン)服用群があったが、強い肝毒性が出たために1998年に中止されている。
  (ST)

訳注1)ハイリスク者とは、BMI(body mass index)が24以上(体重はおよそ94Kg)、空腹時血糖95-125mg/dl、 糖負荷試験2時間値140-199 mg/dl。参加者は糖尿病の治療薬は服用していないが、コレステロール低下薬や高血圧治療薬は服用している人がいる。

訳注2)ライフスタイル強化指導群:体重の7%減少と週に150分の運動を行うことを目標にして、登録後の24週間に16レッスン(ダイエット、運動、習慣改善など)を受け、その後、月に一度の個人またはグループ指導をうける。
メトホルミン服用群:個人面接の生活指導を年1回受けて、メトホルミンを1日2回850mg服用
プラセボ群:個人面接の生活指導を年1回受けて、プラセボを服用

訳注3)メトホルミンは、作用機序は十分に開明されていないが肝臓の糖新生の抑制、糖の腸管吸収の抑制、末梢組織の糖利用の促進など膵外作用にもとづく血糖降下作用と考えられている

訳註4)DPP:Diabetes Prevention Program
    DPPOS: Diabetes Prevention Program Outcome Study