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FDAが企業に義務付ける市販後安全性臨床試験デザインの精査を諮問委員会に依頼

2009-10-23

(キーワード:  市販後安全性臨床試験デザイン、FDA、諮問委員会、FDA再生法)

 FDA再生法2007は、医薬品が開発され製品となり、やがては使われなくなるまで(ライフサイクル)の全期間の安全性を監視し、必要な施策を企業に求める権限をFDA(食品医薬品庁)に与えた。科学アカデミー医学研究所(IoM)がFDA改革の提言を行って3年、FDA再生法が議会で可決されて2年の節目にあたり、2009年9月2日にIoM で広範な関係者が集まり「医薬品安全性フォーラム」が開催された。この席上、FDAは企業に義務付ける市販後安全性臨床試験デザインの精査を諮問委員会に依頼することを明らかにした。ピンクシート誌2009年9月7日号報道の要旨を紹介するとともに、その意義について解説する。
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 FDAは、安全性確保に必要であれば市販後の安全性に関する試験や研究を企業に義務付ける権限を得た。これまではFDAは企業から出されてきた試験計画に意見を言う立場であったが、新たな権限でより大きな責務を負うことになった。このためFDAは重要な大規模安全性臨床試験のデザイン(症例数、試験期間、評価項目など)について、諮問委員会の援助を求めることにした。諮問委員会による大規模安全性臨床試験のデザインの精査はまもなく開始される。
 FDA新薬オフィス・ディレクターのジョン・ジェンキンス氏は、(諮問委員会は公開で開催されるので)このことはFDAの施策決定の透明性を高めるのにも効果的であるとコメントしている。
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 FDAは、FDA再生法2007で、安全性確保に必要であれば、市販後の安全性に関する試験や研究を企業に義務付ける権限を得た。これはFDAが米国で最初の消費者保護を目的とした官庁として創設されてから100年経ってはじめて確立された権限で、違反すれば1違反最高25万ドル(約2500万円)、総額最高100万ドル(約1億円)の罰金が科せられる。これまでは医薬品承認にあたってFDAが企業と協議し市販後研究の実施を企業と約束しても、企業はひとたび販売承認が得られたあとは無視・軽視することがしばしばであった。例えばFDAによる2003年春の調査では、市販後研究を約束通り企業が完了したのは、わずか20%(!!)に過ぎなかった(ピンクシート誌2003年5月26日号)。
 FDAは、2009年7月、企業に求める市販後臨床試験・研究についてのガイダンスを発表した(※1)。ガイダンスではFDA再生法での書き分けに応じて、これまでは「研究」(Studies)として一括して扱っていた「研究」(Studies)と「臨床試験」(Clinical trials)を区別して定義している。「臨床試験」(Clinical trials)とは、医薬品または他の介入を被験者に割り付ける前向きの臨床試験を指す。一方「研究」(Studies)とは臨床試験以外のすべての試験を言い、観察的疫学研究・動物試験・試験管内の試験などが含まれる。これらの試験の中で、大きな資金や期間がかかるのが介入を被験者に割り付ける前向きの比較臨床試験、とりわけ大人数の症例で長期間に亘る実施が必要な安全性に関するランダム化比較臨床試験である。従って、企業側の関心も極めて高いため、FDAは重要な大規模安全性臨床試験のデザイン(症例数、試験期間、評価項目など)について、諮問委員会の援助を求めることにしたのである。ジェンキンス氏が語っているように、FDAの施策の決定過程が諮問委員会を通じて情報公開される意義は大きい。
 このように米国の医薬品のライフサイクルを通じてのリスク管理のシステムは、FDA再生法2007を契機に一段と整備されつつある。日本では、厚生労働省の「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」が、欧米に学びリスク管理のシステムの強化を提言しているが、実現に向けての取り組みの強化が求められている。 (T)